特殊詐欺や強盗などで日本中を震撼させた、通称「ルフィ事件」。初の死者を出した2023年の「狛江事件」は、実は本来のターゲットとは異なる女性に暴行を加えてしまっていた。
事件の裏側について、ノンフィクションライター・栗田シメイ氏の著書『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』(講談社)から、一部抜粋してお届けする。
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「ババア、いないかもしれません」
「狛江事件」の計画が具体的に動き出したのは、1月10日頃からである。「キム」から永田に案件の詳細についてのメッセージが届き、指示役と実行役を繫ぐ新たなテレグラムグループが作成された。指示役には「シュガー(渡邉)」というアカウントが新たに加入した。
「狛江事件」が従来のものと異なったのは、渡邉が指揮に加わったことだ。渡邉は実行役に対し、様々な指示を飛ばしている。この事件では実行役不足、特に運転手役がいないことがネックとなった。そこで渡邉は、山田に運転手役をSNSで募集するように命じた。
小島には、現場の見張り役を募集するように指示する。そして、強盗先の住所を「グーグルマップ」で送ってきたうえで、「ここに定点カメラを設置することは可能か」とも打診してきた。
実行役は、永田と中西一晟のほか、新たに野村広之らが加わった。「ミツハシ」が野村に、「キム」が永田に、「シュガー」が中西にそれぞれ通話を繫ぎ、指示を送っている。計画は、これまでのように宅配業者を装い住宅に侵入し、現金を奪うというものだ。
「ババア、いないかもしれません」
前日の下見の際に、永田が「キム」に報告を入れる。すると、「ミツハシ」が大声で叫んだ。
「空き巣でもいいからいけよ!」
「いや、空き巣だと金庫の確認ができませんよね」
永田がそう話すと、「キム」が仲裁に入る。
「無理、無理。道具もないし明日にしましょう」
実行役たちは一度現場を離れ、全長70センチメートルを超えるバールを購入しにホームセンターへ向かっている。

