先天性の難病「顔面動静脈奇形」により鼻と上唇が変形し、40回以上の手術を受けてきた河除静香さん(51)。現在は見た目による差別を受けてきた体験を芝居にして上演する活動を続けているが、妊娠・出産時にも壮絶な経験があったことはあまり知られていない。歯を3本失い、全身麻酔のまま帝王切開に臨んだその体験は、まさに命がけのものだった。
麻酔が効く前に切られる恐怖、5日間眠り続けた出産
河除さんの病気は、血液の量が増える妊娠自体がリスクの高いものだという。「それを知らなかったから2人作れたんですけど(笑)」と本人は語るが、その影響は深刻だった。長男の妊娠中には鼻だけでなく耳や口からも血が止まらないほど出て、産後の手術と放射線治療の副作用で前歯を3本失った。
次男の出産時はさらに壮絶だった。妊娠後期に倒れてしまい、出産と同時に手術が行われることになった。帝王切開は本来、半身麻酔の予定だったが、手術直前に再び出血が起き、急きょ全身麻酔に切り替えることになった。全身麻酔の薬を入れれば赤ちゃんにも回ってしまうため、医師たちは時間との戦いだった。
「麻酔科の先生が『5分でやります』と言ったら、小児科の先生が『3分でお願いします』とかって言うのが聞こえるがですよ」と河除さんは振り返る。まだ意識があった河除さんは、麻酔が効いていない状態で切られることへの恐怖を感じ、「まだ麻酔効いてないです」と必死で指を動かしてサインしたという。
結局、赤ちゃんは無事に取り出され、そのまま手術も行われた。河除さんはその後5日間眠り続けた。出産後には産婦人科医から「あなたの病気で3人目はダメ」と叱られたが、「本当はほしかったですけど」と河除さんは静かに語る。
そうした経験を経てもなお、河除さんは見た目問題をテーマにした芝居の活動を続けている。かつて自分をいじめていた同級生が子どもを連れて舞台を見に来て、「お父さんは中学の時、この人をいじめてしまった」と自分の子どもに話していたこともあった。「人ってこんなに変われるんだなと、驚きました」と河除さんは言う。
子どもたちへのメッセージとして、「お母さん、人生楽しんどるな。俺らも人生楽しもう」と思ってもらえればいい、と河除さんは微笑む。命を削るような体験を重ねながら、それでも前を向き続ける姿がそこにあった。
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