執拗に流される“難民が押し寄せる”動画
――Z世代の男性の保守化がすごいですね。さらにいうと、排外主義の高まり、移民問題の過熱感にも、ネットやSNSの影響が深く関係していそうですね。
ブレイディ まさにそうで、イギリスでも昨年、小型ボートでやってくる難民の映像が、大手メディアのニュース番組やBBCのYouTubeのチャンネルやSNSでも繰り返し流されていました。連日ああいう動画を浴びると、ものすごい人数が各地の港からどっと入ってきているように見えますが、実際に難民が到着する港ってケント州ぐらいの限られた場所なんです。
イギリス政府が「本日の小型ボートで到着した人数」という数字を公式サイトで公表していますが、今年になってその数字は驚くほど少ない。でも、動画だけ見ていると、何百万人も難民がわんさかやって来ているという印象を持たされてしまいます。
――冷静な報道よりも、主要メディアも「アテンション・エコノミー」に取り込まれているように見えます。
ブレイディ 結局メディアも稼ぎたいから、たくさんの人に見てもらうために、エンゲージメントを高めるコンテンツを流すんですね。恐怖心や憎悪を煽るものは「見たい」「知りたい」気持ちを掻き立てるので、負の感情を増幅させるものが花形コンテンツになってしまう。移民の犯罪映像を流せばSNSで拡散され、さも国中が移民の犯罪だらけのイメージが出来上がります。
アメリカはICE(移民・関税執行局)に莫大な予算と権限を与えて、過激な移民狩りを行っていますが、リフォームUKも政権を取ったら、同様の組織を作ると発表しています。リフォームUKに支持を奪われている保守党も、同じような政策を約束していますから、両党の連立で保守政権が誕生したら、イギリスにもICEのようなものができるでしょう。まさに、「それはどこでも起こり得る」状況です。
憎悪の政治に抵抗する
――憎悪の政治をSNSが加速させるような世界で、果たしてどんな抵抗が可能だとお考えですか。
ブレイディ ひとつヒントになるかもしれない体験をお話しすると、私はいま、地元でフードパントリーのボランティアをやっているんですよ。公民館みたいなところでやっている小さなフードバンクで、コロナ禍のロックダウンの時に買い出しに行けない近所のお年寄りを支援するネットワークができて、今は地域の貧困の方への食料援助を行っています。元々公営住宅地で裕福な地域ではないので、困っている方がたくさんいて。
そんな場所でボランティア活動をする人には伝統的に左派が多くて、緑の党が好きな大学生ボランティアたちが何人もいますが、中にはリフォームUK支持のおじいちゃんボランティアもいます。だから、両者が同じシフトになると、最初はお互いに反目するんですね。
――話も全く噛み合わなさそうですね。
