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仙人が武装警察コスプレ集団と作った映画

 その後、趣味のスイッチが入った仙人は、彼がコスプレ友達の若者を動員して自作したスパイ映画をテレビで再生してくれた。ヒロインの小雪ちゃん(ラブドール)がテロリストに捕まり、それを特殊部隊が救出するストーリーである。

 登場人物たちは本物の武装警察の軍服を着用。中国は社会において軍事が肯定的に取り上げられるカルチャーの国でもあるためか、演出はかなりガチだ。作中では若者が20人近く動員されており、仙人の謎の人脈と中国の軍事コスプレマニアたちの熱心さが垣間見られて興味深い。

過去には人民解放軍の民間向け施設で撮影会をやったこともあるらしく、一緒に写っているのはほぼ全員が現役兵士か退役兵士 ©安田峰俊

武装警察のドールがスパイを捕まえたことにしよう

 衣装部屋に連れて行ってもらうと、作中で小雪ちゃんが着た武装警察の衣装に加えて、国共内戦で戦った中国国民党軍の軍服もあった。仙人は中国共産党員ではないが(※会議に出るのがめんどくさいらしい)、バリバリの文化大革命世代なこともあって、大のミリタリー好きなのである。

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「ひらめいた! 武装警察の小雪がスパイを捕まえたことにしよう。ベランダで撮影だ!」

日本帝国主義の手先としてラブドール武装警察に拘束された私。例によって仙人は指先の位置にこだわる(仙人撮影)

 こうして私は仙人の内面世界に入り込むことに成功し、彼の過去の人生遍歴からドールへのさらなるこだわりまで様々なことを尋ねることに成功した。

 実はこの後、中国国内のあるイベントの取材について仙人のコネで話をつけてもらい、上海で彼に再会する話もあったりするのだが、こちらは機会があればまたいつか書くことにしよう。

 ちなみに、私はこういう斜め上すぎる中国取材のルポをまとめた『さいはての中国』(小学館新書)という本を10月3日に刊行予定だ。小雪ちゃんの製造元である大連のメーカーや、本サイトでも過去に紹介した深圳のネトゲ廃人村への取材を含め、11本の話が収録されている。