フィジーでは「朝起きたら知らないおじさんが…」
松本 オセアニアのリーグの国として初めて行ったフィジーでも強烈な出来事がありました。何もかもが日本と異なっていて、衝撃を受けてばかりで。
たとえば滞在する家に着いてみると、まず鍵が閉まりません。シャワーの蛇口を捻ってもお湯は出なくて、水しか出ません。翌日、朝起きてみると、ぜんぜん知らない小太りのおじさんが部屋にいます。
――部屋に知らないおじさんが?
松本 驚きましたが、「チームスタッフの方かな」と自分を納得させたんです。しかし数時間後、本物のスタッフさんがきて「誰だこいつ」みたいになって。ちなみに、そのおじさんも「あれ、もしかして、お前がニュースに出てた日本人のサッカー選手か?」と驚いていました。
――不審者だった。
松本 私が滞在した家にあった扇風機にあたりに来ていたらしいんです。あとで知ったことには、そのあたりでは同じ村でモノを共有するのはよくあることらしいんです。
私も、スパイクを村人に盗られそうになって止めたら、周囲からむしろ「マツモトはなんてケチなんだ」と咎められました。
だから、「逆に私も他の人のモノを使っていいのかな」と思って、仲良くなってから電子レンジを使ってみたのですが、怒られなかったですね。みんな、そのくらい寛容なんですよね。
ソロモンでは、率先して「お祈り」をすることに
――フィジーの人たちはあまり怒らない。
松本 そうですね。ただ、日本と価値観がまったく違うと感じることもありました。非常に信心深い人たちなので、大切な試合の前日は、みんなで徹夜でお祈りをするんです。
私はスポーツ選手として、じゅうぶんな睡眠を取って試合に臨みたいと考えていたので、「申し訳ないけど寝る」と参加しなかったんです。翌日、寝ていないからハーフタイムにうとうとする選手もいるような状況で、チームは試合に負けました。すると、「マツモトがお祈りをしないからだ」とチームメイトから怒られて。
――釈然としないですね。
松本 確かにもやっとはしましたが、祈りを捧げることが彼らにとって非常に大切であることを実感しましたね。それもあって、その後、ソロモン諸島のマライタという島で発足したチームでプレーをしたときには、率先してお祈りをすることにしました。
すると、働きを認めてもらえて、キャプテンに指名されたんです。おそらくマライタのチームで外国の選手がキャプテンに抜擢されたのは私が最初ではないでしょうか。

