――ソロモン諸島での生活はどうでしたか。
松本 一番驚いたのは、住民が年齢にこだわりがない点です。田舎の島では自分の年齢を知らない人が非常に多いんです。子どもたちは村でサッカーをやって、うまくなると海外でプレーするわけですが、パスポートを取得する際に初めて自分の年齢を申告するんです。だから、兄弟で兄より年上の弟がいたりして。
あるいは、オセアニア地域の別の国にいたとき、見知らぬ子どもが私の家に寄り付いたことがありました。1週間くらいしてその子のお母さんがやってきて、「あぁ、あんたここにいたのね」みたいなことを言ってそのまま帰っていったのにも驚いたのですが、その子が「ぼく、今日誕生日なんだ」と言うんです。年齢を聞いたら「10歳」といいますが、「昨日までは7歳だった」と。年齢という概念があまりないんだと思います。
「ペットボトルをボールの代わりにしよう」
――そんな環境でも馴染んでいけるのはすごいですね。
松本 海外ではサッカーの技術以上にメンタル面を学ぶ機会が多くて。グランドはデコボコで、落とし穴じゃないかと思うような凹みがある場合さえ珍しくありません。くわえて、手配がうまく行かないときはボールが届かないアクシデントもありました。
そんなとき、みんな諦めずに「ペットボトルをボールの代わりにしよう」とか言って本気でやるんです。最初は内心、「ボールの代わりにはならないだろ」と思いましたよ。でも、恵まれた環境になくても一生懸命取り組むのは大切なんだろうなと思います。そんな彼らをリスペクトしているから自然と馴染んでいけるのかもしれません。
――海外と日本のサッカーを比較して思うことは何でしょうか。
松本 日本はトレーニング理論などがきちんと確立されていて、指針が示されているけど、一部の海外は必ずしもそうではありません。日本では比較的恵まれた環境にいる子がサッカーを習ってうまくなるケースが多いですが、小さい子どもがサッカーで成功して家族を養うんだと本気で頑張っている国もあります。
それから、身体の鍛え方が生活に即している国も多いですよね。たとえばソロモン諸島のチームメイトは、イノシシの後ろ足を掴んで海に引きずり込み、食糧にしていました。練習の休憩時間に槍を作っていた人もいます。彼らをみていると、「本当にタフだなぁ」と唸らされますね。


