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『半分、青い。』北川悦吏子が語った「野心」

2018/09/21
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 NHKの連続テレビ小説『半分、青い。』(月~土8:00 NHK総合)が、今月でフィナーレを迎える。ヒロインの楡野鈴愛は1971年生まれ。岐阜県で生まれ育ち、漫画家を目指して上京するも挫折。やがて一大発明を成し遂げる。

 今作の一番の見所は、主人公の鈴愛と、その幼馴染である律との関係性だ。

 これまでの朝ドラは、序盤の数週間で主人公が運命の相手と出会って結婚し、その後はナイスカップルが手を取り合って幸せを掴んでいく……という流れが一般的だった。しかし、ひねくれた私は反論したくてうずうずしていた。こんなにうまくいくかよ、と。

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 鈴愛と律は、同じ日に同じ病院で生まれるという出会いをする。「運命」というものを感じさせながらも、二人はすれ違いを繰り返し、恋愛をするタイミングを見失ったまま成長していく。男女として結びつくのかどうか、最後まで分からない。

夏虫駅で鈴愛(左)にプロポーズする律 提供=NHK

 従来の朝ドラのヒロインには、結婚して子供をつくることが最善の答えなのだと、教えられているような観があった。そんな概念を、本作は吹き飛ばしたのだ。離婚し、シングルマザーとして子育てをする鈴愛の姿からは、結婚してハッピーエンドということでは決してない、別の幸せの形が見えてくる。

 私は呪縛から解き放たれた思いだった。他の視聴者もきっとそうではないだろうか。

 どんな形であっても、そこに深い心の結びつきがあれば何だって正解であると、そう示された気がした。それはとても、優しい指摘だった。

野心は生きる力となり得る

北川悦吏子氏 Photo by LESLIE KEE

 その『半分、青い。』の脚本家である北川悦吏子先生にインタビューできると聞いたときは、驚きのあまりひっくり返りそうになった。私はインターネットのサイト「BUSHOO!JAPAN(武将ジャパン)」で朝ドラのレビューを続けている。北川先生が普段からそれを読んでくださっていて、私をインタビューの聞き手に指名していただいたのだ(インタビューは「文藝春秋」10月号に掲載)。

 実際にお会いした北川先生はとても明るく、気さくな方だった。そして、エネルギッシュ! これが本物の楡野鈴愛なのだな、と納得した。鈴愛の持つ力強いパワーが、体中から溢れているかのようだった。