「もう別れましょう」

 事件が起きる前の花火大会の日、そんな仲でも愛梨さんは楽しみにしていて、仕事を休んで準備していたが、辻橋とは朝から連絡が取れなかった。ようやく連絡が取れたのは開催直前の夕方で、駅で待ち合わせることになったが、辻橋はパチンコで負けたために不機嫌だった。

 電車に乗っても無言で、携帯をいじっているだけ。花火大会の会場に着き、愛梨さんが歓声を上げて写真を撮っていると、「オレのことを放置した!」と言って怒り出し、スタスタと歩いて帰り始めた。

「ちょっと待ってよ。私、一緒に花火を見ようと思って楽しみにしてたんだよ。クライマックスの花火は一緒に見ようよ」

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「お前だけ勝手に見てればいいじゃねえか!」

 そんな捨て台詞を吐いて帰ろうとする辻橋の後ろ姿を見て、愛梨さんは限界に達した。ポロポロと涙をこぼし、花火を背にひとり帰路に就いた。

「もう別れましょう。私、我慢できないわ……」

「おう、別れたるわ!」

 家に帰ってから電話で話すと、辻橋の怒りはまだ持続していて、いとも簡単に別れ話には応じたものの、これですんなりいくとは愛梨さんも考えていなかった。