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遺族の心の傷は癒えていない
池袋暴走事故は関係者にとって依然センシティブな事件だが、加害者である飯塚幸三がこの世を去り、あらたな証言が出てくる可能性はほぼなくなった。松永、飯塚両家に本書の出版を相談したところ、「事故の現実を書くのであれば」と同意してくれた。七年という歳月は長く感じられるが、事故の重大さに比べるとまだ日が浅い。遺族の心の傷は癒えていない。また、加害者側には誹謗中傷がいまもなお続いている。
執筆を一〇年、二〇年と待った方が望ましいとも悩んだ。しかし、高齢ドライバー問題は、若いうちは家族として、老いてからは当事者になる。池袋暴走事故は「時代の鏡」といえる事案であり、その知られざる真相を早く伝える必要があると考えた。
私はこれまでの取材内容の一部を「報道特集」などで放送したが、取材の全てを伝えきれていなかった。池袋暴走事故をめぐる報道全般を見ても、全体像を伝えるものは多くない。こうした状況も執筆の動機となった。