岡崎までの新快速の車窓は、名古屋郊外の市街地が続く。そんな景色をぼんやりと眺めていると、学生時代に岡崎出身の友人がいたことを思いだした。

 彼が岡崎出身だと聞いて、詳細な地理を知らないままに「名古屋の方ね」と応じてしまった。すると彼は目の色を変えて、「あっちは尾張、こっちは三河。ぜんぜん違うから」と言った。現在の愛知県、西はかつて尾張国、東は三河国だった。明治の昔にひとまとまりになってからずいぶん経つというのに、“国境”は現代になっても案外意識されている。

名古屋駅から岡崎駅へ。各駅停車では1時間ほどかかるが、新快速に乗れば30分ほどだ

 そして彼はこうも言った。「尾張は信長でしょ。三河、岡崎は家康だから。最後に天下を取ったのはこっちだから」。

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 なるほど確かに、岡崎は徳川家康の生まれ故郷だ。桶狭間の戦い後、今川氏の支配から脱した家康は岡崎を拠点に力を蓄えた。岡崎は天下取りの原点、というわけだ。ならば、岡崎駅では何らかの形で家康公がお出迎えしてくれるに違いない……。などと期待しながら、岡崎駅に到着した。

「やっぱりいました徳川家康」

 全列車が停まる38万都市のターミナル・岡崎。が、とりたてて何か特徴のあるわけでもない普通の駅だ。ひとつ挙げるとするならば、愛知環状鉄道線という第三セクター鉄道が乗り入れていることくらいだろうか。

JR岡崎駅東口のロータリー。バス乗り場には行列ができていた
愛知環状鉄道にも乗り換えできる

 愛知環状鉄道は、岡崎駅から北に走ってトヨタ自動車の本社工場の目の前や豊田市の中心市街地などを通る。つまり岡崎は、天下のトヨタの玄関口のそのまた入口のような駅でもあるということだ。

 それはともかく、愛知環状鉄道以外には、何の変哲もない橋上駅舎。改札の脇に売店がひとつあるだけだ。うーむ、ここが本当に38万都市のターミナルなのか。