僕は20年以上、若者を研究してきました。しかし、ここまで尖ったファッションがこれだけのボリュームで出てきたのは、初めてのことです。
なぜ、若い女性たちは「かわいい」とは異なる姿を、あえて選ぶのか。調査を重ねるなかで、若者たちをめぐる複雑な構図が見えてきました。
表向きは「多様な美」、リアルは「過剰なルッキズム」
まず前提として、社会全体では「ルッキズム(外見至上主義)はよくない」という価値観が浸透し、今の若者はそういう教育を受けて育ってきました。人気アイドルを見ても、XGやHANAのように、これまでのアイドル像とは違う容姿や坊主頭の女性が支持を集めています。表向きは、多様な美が認められる時代に見えます。
ところが、SNS上やリアルの生活では、真逆の動きが起こっているのです。加工して嘘をついてもダメ、本当に美人以外は認められない、というくらいの状況になっている。ちょっと複雑なのですが、これが実態だと思います。
象徴的なのが、今年上半期に爆発的に拡散した「ルッキズム風刺画」です。着飾って可愛くメイクした女の子と、着飾ってはいないが生まれつき顔立ちの整った女の子を並べたイラストで、若者ならみんな知っているほど広まりました。努力(メイクや加工)では、生まれ持った骨格には勝てない――そんな現実を突きつけるものでした。
さらに、若者にとって美容整形は珍しいものではなくなり、マンジャロという薬を痩身目的で使う動きが物議を醸しました。今までは加工アプリで足を細くしたり顔を小さくしたりしていたのが、もう原型そのものを変えなければいけない、という流れになってきている。多様性があるように見えて、実は美の基準がひとつに絞られてしまっているのです。
この過剰な同調圧力への反発として、自分の見た目に自信のある一部の女性たちが、極端に真逆のことをやり始めた。それがお歯黒であり、眉消しだと僕は考えています。