さらに、SNSが「見られる場」としての価値を落としていることも大きいと思います。すごい写真が誰でも簡単に作れるようになった結果、1投稿あたりの価値が下がりました。AI上では何でも作れるけれど、AI以外では承認されにくくなっている“自分の素の姿”。その承認欲求を、もう一度取り戻すための手段、とも言えるかもしれません。

お歯黒や眉消しは、リアルでもSNSでも一貫しているからこそ意味を持ちます。SNSだけで眉のない写真を上げても「メイクを忘れたのかな」と思われるだけです。でも、リアルでもSNSでも本気でやっていれば、「自分の主張でやっているんだ、かっこいい」と受け取られる。ここが肝心なところです。

「超尖る個性」は、過剰な同調圧力から生まれた

念のため言及しておくと、これらのトレンドは、誰もが真似できるものではありません。あくまで、おしゃれに自信のある一部の人たちに限られます。同じことをしても、人望のある人がやれば称賛され、そうでない人がやれば陰口を叩かれてしまう。だから多くの若者は、むしろダイエットや美容整形、「浮かない格好」へと流れていきます。

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では、この「超尖る」現象は、若者の健全な自己表現なのでしょうか。僕の見方は、少し複雑です。

本当に自分の好きなものを追求していい時代なら、そんな極端なことをやらなくてもいいはずです。それなのに、極端なことをやる人たちが突如として一定量出てきた。これもまた“個性の圧力”だと思うのです。結局みんな、何かのスタイルで個性を出さないといけなくなっている。

SNSやAIは、本来、個人の自由を広げるはずのものでした。好きな情報を選び、診断で自分に合うものを知り、AIで理想を作り出す。ところが実際には、パーソナルカラー診断や骨格診断が「あなたに似合うもの」を細かく規定し、AIが似たような理想像を量産し、ありのままのSNSが逃げ場をなくしました。結果として、過去最高レベルの同調圧力が生まれてしまっている。