脳みその中にあったのは…
脳の組織に、通常では見られない奇妙な「シミ」のようなものと、「もつれ」のようなものが無数に存在していたのです。これらは後に、「老人斑(アミロイド斑)」と「神経原線維変化(タウもつれ)」と呼ばれる、アルツハイマー病の決定的な病理学的特徴であることが判明します。
こうして彼は、世界で初めて「脳の異変」を病気として視覚的に捉えた人物となったのです。
その医師こそ、若き日のアロイス・アルツハイマーです。
アルツハイマー医師は、この症例を学会で発表しましたが、当初はそれほど注目されませんでした。というのも、アウグステがわずか51歳だったこともあり、「50代で発症する稀な若年性の病気」と最初は捉えられていたからです。
その後、高齢者の認知症でも同じ変化が確認されたことで、アルツハイマー医師の発見した疾患は高齢者の認知症と同じであったことがわかり、病気の名が世界に広まっていきました。この発見は、単なる加齢現象とされてきた「認知症」のなかに、明確な病気が存在することを示しました。
前章では、巷に溢れる認知症予防に関する情報のなかに、残念ながら科学的根拠が乏しいものや、かえって注意が必要なものが少なくないと伝えました。
しかし、落胆する必要はありません。皆さんの脳の健康を蝕む敵の正体は、すでに科学的な裏付けによって大部分が解き明かされています。
私たちの脳が「壊れる」原因とメカニズム。これを理解することが、脳の健康を守り、「糖毒脳」のリスクを遠ざけるために最も重要で具体的な第一歩となります。
