「代理人なんて認めないよ!」球団は強硬姿勢を貫いた

 一緒に部屋に入ると、そこには当時の前田泰男球団社長の他、数人の球団関係者が陣取っていた。

「なぜ野村くんがいるんですか?」

 面識があった前田社長は、私の顔を見るなりそう言った。

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「僕の代理人ですから」

 野茂が答えると、前田社長は声を荒らげてこう言った。

「代理人なんて認めないよ。野村くん、出て行ってくれたまえ」

 野茂はきっぱりと言った。

「野村さんが出て行くのなら僕も出て行きます」

©文藝春秋

 その言葉を聞いたとき、私は感激した。彼は、こんなにも自分を信用してくれているのだ、と。

 前田社長はそれでも認めなかった。

「野茂くんはここにいてください。君はうちの大切な選手だから」と腕をかかえて止めにかかる。「代理人交渉を認めること」は、われわれの大事な要求項目の1つだったが、こうして早くもはねつけられた。

 私は考えた。ここで揃って席を立つべきかどうか。だがこう思った。

「ここでこちらが態度を硬化させれば、球団との接点がなくなってしまう。だが、交渉はこれからだ。1回目から決裂してしまえば、こちらの立場は弱くなる。ここは一度相手に譲っておき、向こうの話を聞いたうえであらためて策を練った方がいい」

 そして野茂にこう耳打ちした。

「ここはとりあえず相手の話を聞いてみた方がいい。どうせ今日サインをするわけじゃないんだし。僕はロビーで待っているから」

 野茂はうなずき、仕方なく1人で交渉の席に着くことになった。

次の記事に続く 「やりました、引退です!」近鉄との交渉がこじれ…野茂英雄が念願のメジャー入りを果たした“衝撃的すぎる交渉”の裏側

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