それから次第にアメリカで手話のジャパンの表現が変わったという。差別に向き合う黒柳さんの姿勢に、あるエピソードを思い出した。1980年、手話の劇団サークルが立ち上がったのと同じ年。黒柳さんが司会を務めていたTBSの歌番組『ザ・ベストテン』で、人気グループのシャネルズが登場した際、中継現場から子どもが質問した。
「シャネルズはどうして黒人のくせに香水の名前なんか付けるんですか?」
シャネルズはメンバーが顔を黒塗りにして歌っていた。今はそれ自体が差別的とされるが、この質問は当時としても明らかに差別だ。生放送中のハプニングだが、黒柳さんはこれを見過ごさなかった。涙声になりながら視聴者に訴えた。
「顔の色とか国籍が違うということで、そういう区別をした言い方をすると、私は涙が出るほどとっても悲しく思いますので。皆さん、そういうことで一段高いところから人を見下ろすようなふうに、どうぞ“何々のくせに”とか言わないで下さい。お願いします」
あれから46年。黒柳徹子さんは92歳になった今も、差別を許さない姿勢を映画でシャキシャキと語ってくれる。その魅力が半端なく画面からあふれている。
そして出演するろう者たちは、自分たちが大切に育ててきた手話狂言について、無音の“熱弁”を振るう。ろう者の無音があることで、音のあるシーンが鮮やかに際立つ。それを象徴するシーンが最後に用意されている。無音と、音の世界が絶妙に交錯する作品を、終わりまで味わってほしい。
「手話で狂言をやりましょう」黒柳徹子の発案で始まった<日本ろう者劇団>による手話狂言の歴史は、40年以上。果たして手話狂言の魅力とは? 元来の狂言との違いは何か? そして、手話狂言は世界でどう映っているのか? 海外で上演した『瓜(うり)盗人』の貴重な映像、関係者の話などを通して、手話狂言の真価を検証する。
出演・エクゼクティブプロデューサー:黒柳徹子/監督:藤井秀剛/出演:三宅右近、三宅近成、井崎哲也/2025年/日本/70分/©2025社会福祉法人トット基金/7月25日(土)よりシアター・イメージフォーラム(東京)他ロードショー

