1000万円は重さにして1キロ。それが重いのか軽いのかわからないまま眺めながら、これまで散々金に苦労した過去や、それらがすべて自分の浅はかさゆえに招いた事態であることを思い出していた。

写真はイメージ ©getty

 そうした過去があるために関わってしまった事件のコトの大きさにいまさらながら気づき、恐怖と後悔……様々な思いが込み上げ、悔し涙さえ出た。

悔し涙を流す男の名は…

「なにやってんだ、俺は……」

ADVERTISEMENT

 自分自身に対し、これまで感じたことのない怒りが込み上げた。

「ちくしょう!」

 堪えきれず吐き出した言葉と共にレンガをベッドに投げつけた。自ら詐取した金を投げるというのは、甚だ矛盾した行動だが、そうせずにはいられなかった。

 自分に怒りを感じながらも、犯した罪やその罪悪感を正当化するような自問自答も繰り返した。

「1週間後には積水ハウスのもとに法務局から連絡がきて詐欺に気づくだろう」

「そうしたら、あっという間に捜査されて事件化する」

「俺も捕まるのか? いや、俺はあくまでメインではない連絡役。大丈夫だろう」

「外に出ないほうがいいのか? いや、俺は顔が割れてないから大丈夫だろう」

――この男の名は「カトウ」。本名ではなく、当時、「地面師詐欺」に関わる際に使っていた“偽名”だ。地面師たちは詐欺行為をする際に、こうして偽名を用いる者もいる。カトウは、17年に大手デベロッパーの積水ハウスが地面師たちによって55億円を騙し取られた詐欺事件(以下、積水詐欺事件)で、実行犯のひとりとして18年10月に逮捕された。