新宿・歌舞伎町の片隅で、居場所を求める若者たち「トー横キッズ」。彼らの間では咳止め薬や睡眠導入剤のオーバードーズが蔓延しているが、その逃避行の手段は徐々に大麻へと移行しつつあるという。

 医者の家系に生まれながらトー横にのめり込む少女マキ、キッズたちに大麻を売りさばいていたホームレスのプッシャー“おじさん”……。ここでは磯部涼氏の著書『脱法』(大洋図書)の一部を抜粋し、社会の底が抜けたような新宿のリアルを紹介する。

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エリート家系に息苦しさを感じていた

 マキがトー横に出入りし始めたのは、当初は勤務している事務所での仕事の一貫でしかなかったが、その内、同地に居心地の良さを感じるようになったという。

「いわゆるトー横キッズにはキラキラしているインフルエンサーみたいな子たちもいて、私自身はどっちかという隠キャなので、そういう子たちはちょっと近寄り難かったんです。他方、トー横には大人たちもちらほらいたんですが、彼らはほんとにダメな感じで、何か話していると安心したんですよね」

※写真はイメージ ©AFLO

 地方の、親族の多くが医者だったというエリート家系に生まれた彼女は、その環境に息苦しさを感じ、いつか外に出ることを夢想しながら育った。

「ドラッグをやったことはなかったですけど、リスカはしていましたね。腕をすぱっと切って、流れ出る血を見ていると現実から逃れることが出来て。とにかく何処かこことは違う場所に行きたかったんだと思います」

 やがてマキは大学進学に伴って上京する。

「地元にいた頃からサブカルチャーは好きで、東京ではいろいろな映画が観られるのが楽しかったです。下高井戸シネマで隣の席になったおじさんから、上映後、飲みに誘われてそのあとホテルに行って。都会だとこういう、それこそ映画みたいなことが起こるんだなと思いました。

 その後、出会い系サイトで出会った別のおじさんに乱交パーティに連れていってもらうようになって。ドラッグと言えば、そのひとに、次のパーティーではアナルセックスをするから準備として下剤を飲んでおいてって言われて、大量に服用した時はとにかくお腹が痛くなって、でもそのおかげで余計なことを何も考えずに済んで良かった」