「『なんでオレやねん』という気持ちはあります。今も同じように事業をしているひとはいるわけですし。ただ、自分が逮捕されることで一段落ついたのは良かったとも思います。当時、自分は新たな成分を開発してでも、規制に抗って商売を続けるつもりだったので、逮捕が先になったら恐らくもっと危険なことになっていた。100店舗出そうと計画していましたし、それが実現した末に違法成分が出たら極端な話、100回再逮捕されていた可能性もある。そういう意味ではあの段階で終わって、長期的に見れば良かったんじゃないかなと」
日本のカンナビノイド業界は利権によって葬り去られた
現在、松本は大麻とは別にもともと興味を持っていた、ジュエリー・ビジネスに関わっている。大麻への愛と日本の現状の妥協点として開発された大麻グミを経て別の道へと歩んだ彼は、現在の日本の半合成カンナビノイド市場がシュリンク(縮小)している様子についてどう思うのだろうか。超党派によるCBD議連がつくられ、規制緩和へと向かうかと思われたが、改正大麻取締法は状況をむしろ逆のベクトルへと進めかねない。
「やっぱり悲しいですよね。大麻を知っているひとなら、悪いっていう人よりいいっていう人のほうが圧倒的に多いじゃないですか。それが利権によって状況が閉じていく……当然、世界は利権によって動くものですけど、僕は大麻好きだからやっぱり情があるんでしょう。2020年代初頭の一瞬、花開きかけた日本のカンナビノイド業界は、危険ドラッグに分類されることで葬り去られたということですね」
大麻グミ事件の容疑者は10ヶ月後の2024年9月に書類送検された(その後、不起訴)。
「全盲の方で、知的障害があるということは分かっているんです。もともと、僕の会社としては商品を販売するべきではないと考えていたような方でした。事件の直後、その方に商品を売った販売店には、そういうケースには充分注意して欲しいと伝えました。当事者に関しては……正直、最初は見つけて懲らしめてやろうと憤っていましたよ。ただ、時間が進むにつれて、仕方がなかったのかなと思うようになりました。彼は(取り調べに対して)『自分が食べて、良かったから人にも配りたかった』と言ったそうです。それは本音だったと思うんですよ。そういう方を罰したところで何も変わらないし、だから僕はその人のことを考えるのはやめました。いいも悪いもないです」
こうして第2次脱法ドラッグ・ブームは終わった――のだろうか?