アフマットの拠点があるクルスクの村だ。相棒のアルメニア人には帰還命令はなく、僕だけへの通達だった。村に戻れば、脅威はバーバ・ヤーガの爆撃とカミカゼのみ。最前線の暮らしに比べれば天国のようなものだ。
危険なのは村まで帰る道中である。車両に乗っている間の道のりは常に攻撃に晒される。国防省とアフマットを合わせて、この道中だけで40日間に6人が亡くなっていた。負傷者はその倍だ。
戻る準備をしているときも、隣のアルメニア人はため息ばかり漏らしていた。僕の代わりに来る兵士が新兵だった場合、彼が先頭に立って戦うほかないからだ。
ベルゴロドで過ごした40日間は、精神的にも肉体的にも限界に近かった。前線で見たことについての僕の意見は、アフマット全体ではなく、あくまで僕が所属した中隊について述べたものだ。さまざまな意味で、ベルゴロドでの戦闘は特異だったと言わざるを得ない。
命がけの「ペットボトル排泄」
人間は必ず排泄する。それは戦地であっても同じだ。現代戦はドローンの赤外線カメラで四六時中、敵軍から監視されているため、気温の低い夏場の夜や冬に野外で排泄はできない。排泄物の温度で感知され、人間の存在が明らかになってしまうからだ。
ではどうやって用を足すのか。仲間たちがいるブリンダッシュのなかで排泄をしている。ペットボトル上部の細くなった部分をカットして、そこに肛門を密着させて大便をするのだ。
ちなみに、一緒に小便を出すのは御法度である。ブリンダッシュを汚してしまうからだ。大便だけを出した後、拭き取ったティッシュを便の上に載せてそこに小便をする。ティッシュは跳ね防止の役割も果たす。これが兵士の排泄行為のルールである。
ただ、悪臭を放つ排泄ボトルをブリンダッシュのなかには置いておけない。そこで、ボトルに穴を開けて紐を通し、鞄のストラップのような状態を作る。そのストラップを持って、排泄ボトルをブンブンと振り回すのだ。ふざけているのではない。野外に向かって遠投をするために、全力で振り回す。遠心力を上手く使わないと理想的なアーチを描けない。