外国人による日本の不動産購入を規制すべき――そんな声がSNSや政治の場で高まっている。政府も今年6月頃に何らかの規制策を打つと示唆していた。しかし実際には「当面見送り」という結論が、ひっそりと発表された。なぜ、これほど国民感情が高まっているにもかかわらず、規制は動かないのか。
BUNSHUN MONEY SCHOOLに出演したオラガ総研代表・牧野知弘氏は、その構造を率直に語った。(全2回の2回目/はじめから読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年7月11日配信)
「なんて安いんだ、パラダイスだ」
問題の根本には、為替がある。牧野氏はこう説明する。「外国人から見て、日本の不動産って激安なんですよ」。コロナ前に1ドル110円程だった為替レートが、現在は160円台までになった。これは円の価値が4~5割下落したことを意味する。
「5年前は90万ドルぐらいだったものが、いまは60万ドルで買えるようになったわけです」。ニューヨークの相場と比べれば「なんて安いんだ、パラダイスだ」と感じる外国人投資家が殺到するのは、合理的な行動だ。特に中国、台湾、香港といったアジア系の投資家は、地理的な近さに加え、「中国本土だといつ資産を取り上げられるか分からない」という不安から、日本に資産を移す動機を強く持っている。
三井・三菱が「買えない」理由
事態はマンションだけにとどまらない。牧野氏が「非常に問題になっている」と語気を強めたのが、日本の大企業が長年保有してきた都心の不動産だ。「日本の大企業が古来持っていた都心の不動産が、どんどん外国人に購入されています」。
具体的には、物言う株主(アクティビスト)が企業に対して「資本効率を上げるためにビルを売れ」と迫り、売りに出された物件の入札に欧米系の不動産投資ファンドが集まる構図だ。「それなら三井や三菱などが買えるんじゃないか、と思うじゃないですか」と牧野氏は言いながら、「でも、買えないんです」と続けた。理由は単純だ。「円で勝負しているから」。外資は為替の恩恵を受けて割安に入札できるが、国内企業にはその武器がない。
