ひとつは、「抗日パルチザン」とともに北朝鮮を支えた「朝鮮戦争の参戦将兵」に敬意を表することで、権力基盤を固める狙いだ。抗日パルチザンたちはほとんどが鬼籍に入り、朝鮮戦争の参戦将兵の生き残りも数少ない。ただ、「建国の父、金日成主席を支えた人々」の子孫は、そのまま「赤い貴族」として政府や軍、党の要職を独占している。朝鮮戦争の参戦将兵への敬意の表明は、そのまま金正恩父子を支える側近たちの祖先を大切に扱うことを意味する。
そしてもう一つの狙いが、北朝鮮を揺るがしている米国や韓国による「文化侵略」からの防衛だ。朝鮮中央通信などによれば、参戦将兵の生き残りのお年寄りが多数、平壌に招待されたという。お年寄りたちは様々な場所で児童や学生との対話集会に参加し、朝鮮戦争での体験を語った。若い世代に過去の苦しかった時代を思い起こさせ、愛国心を高めると同時に、最高指導者の下で一致団結させようというわけだ。
27日の記念公演では、戦時歌謡などが演奏されたことを北朝鮮公営メディアが報じている。努光鉄国防相は同日夕刻に平壌であった記念行進で「1950年代の祖国防衛者の英雄主義と階級の使命を装填した継承者の行進は今後も毎年続き、わが国家の栄光を不滅にする」と演説した。早速、29日付けの労働新聞は、「朝鮮戦争勝利73周年に際して全国の青年が戦勝世代の魂を受け継ぐための決意集会を28日、平壌の祖国解放戦争参戦烈士墓の前で行った」と報じた。もちろん、これが「官製集会」であることは、朱昌日党書記と党平壌市委員会の金秀吉責任書記が参加していることからもはっきりわかる。
若者世代への危機感
北朝鮮がここまで必死になるのは、今の若者世代への危機感があるからだ。
北朝鮮では「ジャンマダン(市場)世代」と呼ばれる、1990年代半ばに起きた大規模な食糧難以降に生まれた人々が30代になった。配給など国家の恩恵をほとんど受けたことがなく、市場で働いて必要な生活費を稼ぎ、市場で必要な日用品を手に入れている世代で、国家や最高指導者に対する関心が低いのが特徴だ。さらに、スマートフォンなどの扱いに慣れ、外国文化に非常に敏感な世代でもある。