「三河雑兵心得」は長男、「北近江合戦心得」は次男、「真田武士心得」は三男――。井原忠政さんは、三つのシリーズを兄弟のように位置づけている。徳川、豊臣、そして天下取りに翻弄される側。同じ時代を異なる視点から描くために、次男と三男はどう生まれたのか。架空の主人公・遠藤与一郎と、実在の武士・鈴木右近の成り立ちを聞いた(全3回の第2回)。
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――戦国三部作として、北近江合戦心得シリーズと真田武士心得シリーズも発刊されていますが、これらはどのような作品でしょうか。
井原 戦国三部作は、「天下取り三部作」と位置付けています。
「三河雑兵心得」は徳川から見た天下取りを描いていますが、「北近江合戦心得」では豊臣側から見た家康の天下取りがメインストーリーです。この2シリーズは「天下取りの当事者同士」です。
一方、天下取りに翻弄され、自らの生き残りを目指して知恵を絞る「非当事者」サイドを描いたのが「真田武士心得」です。
例えば同じ富士山でも、静岡側と山梨側から見るのでは姿・形が違いますよね。それと同じように、家康の天下取りという1つの事象を、別々の視点から見ることで違った見え方・見せ方ができるのではないかと思い、北近江と真田を書き始めました。
茂兵衛と与一郎――主人公を「かぶらせない」
――北近江合戦心得では、新たな主人公・遠藤与一郎が登場しました。
井原 与一郎も歴史上は存在していない架空の人物です。浅井長政の家臣・遠藤喜右衛門の嫡男という立場で描いています。元山賊のガサツな大男の相棒とともに、様々な困難に立ち向かいます。
ちなみに、私は執筆する上で主人公に関しては、使用する武器、性格、風貌などキャラクターが被らないよう意識しています。「このキャラ、あいつと同じじゃないか」と思われたくないからです。茂兵衛は「体格が良くて膂力がある、少し粗暴な槍使い」ですが、与一郎は「整った顔立ちの美少年で、忠義を重んじる弓と馬の名手」としています。
