「可哀想な少年」鈴木右近の人生を調べてみると

――2作品とは異なり、実在した人物である鈴木右近を主人公としたのが真田武士心得ですね。

井原 三河雑兵心得シリーズの11巻で、名胡桃城の落城について触れました。城代を務めていた鈴木主水が、敵の罠にハマり名胡桃城を奪われ自決した事件です。

 執筆に際してこの事件を調べる中で、主水の嫡男である右近の存在を知りました。当初は「城を奪われ、父を亡くした可哀想な少年」という程度の認識でしたが、色々と調べていくと非常に興味深い人生であることが分かったのです。この時、右近の人生について書きたいと強く感じました。

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 名胡桃城事件の後、右近は真田信幸の家臣となります。そうした歴史的背景もあり、右近を主人公にした真田武士心得シリーズが誕生しました。

 

――北近江合戦心得に茂兵衛が登場するなど、シリーズの枠を超えた仕掛けも面白いですね。

井原 それぞれの作品は独立して読むことができますが、通しで読むことで主人公たちがカメオ出演していることにお気づきになるかと思います。その辺りもお楽しみいただければありがたいです。

 北近江合戦心得と真田武士心得は、まだまだ物語が続きます。今後もご期待いただきたいと思います。

井原忠政(いはら・ただまさ)
神奈川県出身。中央大学法学部法律学科卒業。2000年、脚本「連弾」が第25回城戸賞に入選し、経塚丸雄名義で脚本家デビュー。主な作品に『鴨川ホルモー』『THE LAST -NARUTO THE MOVIE-』などがある。16年、『旗本金融道(一)銭が情けの新次郎』(双葉社)で時代小説デビューし(経塚丸雄名義)、翌年、同作で第6回歴史時代作家クラブ新人賞を受賞した。20年、ペンネームを井原忠政に変えて歴史時代小説「三河雑兵心得」シリーズ(双葉文庫)の刊行を開始。同シリーズで日本ど真ん中書店大賞2023を獲得。22年、「北近江合戦心得」シリーズ(小学館時代小説文庫)、25年、「真田武士心得」シリーズ(文春文庫)の刊行を開始。また同25年、原作の漫画化作品である『羆撃ちのサムライ』が第54回日本漫画家協会賞まんが王国・土佐賞を漫画家の本庄敬と共に受賞した。26年には、井原戦国三部作で第15回日本歴史時代作家協会賞「シリーズ賞」を受賞。

次の記事に続く 『NARUTO』映画の脚本家は、なぜ戦国時代小説を書いたのか――井原忠政が『三河雑兵心得』を生むまで