FMH内にはダルトン側を分断しようと、いったん北尾を社外取締役として遇する案が浮かんだが、まとまらなかった。これも北尾を怒らせる結果となった。

 とはいえ、北尾が4月に行った記者会見は大衆受けはせず、むしろ逆効果となった。FMH経営陣はホッとしたものの、6月の株主総会で彼らに同調する投資家が増えないよう、投資家向けに宥和策を打ち出して乗り切らざるをえないと考えた。このころは村上よりも、まずはダルトン&北尾対策が優先された。そのためには一にも二にも株価を上げる必要があった。

お台場のフジテレビ本社ビル

「御社の株を33.3%まで」

 そうしてまとめたのが、5月に公表した「改革アクションプラン」だった。そこには3年以内に1000億円超の政策保有株(持ち合い株)を売却し、29年度までに1000億円超の自社株買いを実施することを盛り込んでいる。

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 通常の株価対策であれば、それでもよかった。金光や清水ら経営陣がどれだけ意識していたかはわからないが、この方針はつまり、決戦を控えたフジにとって“不利”になる方策だった。自社株買いをすれば、発行済み株式総数という分母は小さくなる。持ち合い株の解消によって、援軍となる与党株主の割合も減る。半面、強い意志を持って攻勢を強めるアクティビストの保有比率は相対的に高まる。結果的に、襲撃する相手に対して守りを弱めることになってしまうのだ。

 さらにフジは「アクションプラン」で、ROE(自己資本利益率)8%以上を目指すことを公約に掲げた。一連の不祥事発覚前の2024年3月期でさえROEは4.37%しかなく、直近の2025年3月期に至ってはスポンサー離れによってマイナス2.4%という、体たらくである。

 8%を実現するのは容易ではない。やがてこれが村上らが付け入る隙となり自らを縛ることになる。