フジ幹部によると、雇ったボストン・コンサルティング・グループの助言を反映したものだったらしい。主幹事証券会社の大和証券や、長い付き合いの大手ローファームの長島・大野・常松法律事務所も含めたチームでことに当たったが、フジの対応は常に後手に回っていく。傭兵たちは高い報酬を得る割には、実戦経験があまりにも乏しかった。
6月25日に有明アリーナで行われた株主総会は4時間半にも及ぶ異例の展開となったが、結局は現経営陣が乗り切った。ダルトンが担いだ北尾ら12人の取締役候補は、最も票を集めた北尾でさえ27%しか支持が集まらず否決された。
だが、フジの経営陣が一安心したのも束の間、村上はすぐさま牙をむきだしにする。
村上は娘の絢と連れ立って1週間後の7月2日、お台場の本社で清水社長と面談している。
「御社の株を33.3%まで買い進むつもりです。そのために1500億円ほど用意しました」
村上はそう言って、放送法が定める上限規制いっぱいまで株を買い占めることを宣告した。3分の1も買い占められては、株主総会で特別決議が必要な、合併や事業譲渡、定款変更などの重要事項を覆される恐れが出てくる。
実は村上は、25年4月から6月にかけて「フジに人生をかけたい」と言って、それまで手がけていた三井住友建設や愛知製鋼、クレハなどの株を相次いで売却していた。
こうして得た資金を元手に、1171億円を投じてFMH株の17.95%を買い占め、事実上の筆頭株主に躍り出ようとしていた。
東京地検特捜部に逮捕されてから19年と1カ月。村上の壮大な復讐劇は、ここからさらに加速していくことになる。
(文中敬称略、続く)
【前編とあわせてお読みください】
(おおしかやすあき/1965年東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、1988年、朝日新聞社入社。『メルトダウン ドキュメント福島第一原発事故』で講談社ノンフィクション賞を受賞。ライブドアや村上ファンドを描いた『ヒルズ黙示録』でデビュー。ほかに『金融庁戦記』『東芝の悲劇』など。38年間、現場記者ひとすじ。朝日新聞社を退社し、フリーに。)
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