――たとえば杏ちゃむさんと生活するうえで、相手はどんなことを理解しないといけませんか。
杏ちゃむ 蛍光灯デスマッチをやると、皮膚のなかに細分化された破片が埋め込まれて、長い時間をかけて排出されるんです。そうすると、忘れた頃に「あれ、廊下にガラスの破片があるな」ということが起きます。実際、ある朝起きてベッドがキラキラしていることに気づきました。ぜんぶ蛍光灯ですよ(笑)。
デスマッチの痛み
――デスマッチの難しさ、面白さはどこにありますか。
杏ちゃむ 難しさとしては、練習ができないことですね。「来週、蛍光灯を使うから練習しとこう」とはならない。すべて1回きりです。武器を自作することも多いですが、必ずしも相手だけが食らうとは限らない。自分が食らうことも想定しないといけません。
また、ファンは派手で過激なものを求める傾向がありますが、案外「一般の人たちが数万分の1でも理解できる痛み」を演出することが大切というのもレスラーがわとしての面白さですかね。紙で指先を切った経験は誰にでもありますよね。だから、相手レスラーの指と指の間を紙で割いてやれば、想像ができる。蛍光灯のような派手な武器も魅力的ですが、蛍光灯で殴られたことがある人ってあんまりいないじゃないですか。そういう想像力が鍵になると思っています。
――デスマッチをやって知った痛みはありますか。
杏ちゃむ 裸足で画鋲デスマッチとか、口に安全ピンを貫通させるデスマッチを経験してきましたが、往々にして刺すときよりも抜くときのほうが痛い……ということですね。凶器がなくなって、もとの姿に戻ろうとするときのほうが痛みを強く感じるんです。
――日頃から痛みには強いのでしょうか。
杏ちゃむ 「くる」と分かっている痛みは耐えられると思います。採血のときには自分で動画を回したり(笑)。ただ、不意をつかれる痛みは本当に苦手です。

