デスマッチレスラーが受ける誤解
――デスマッチは世間から誤解されやすい側面もありますね。
杏ちゃむ 眉をひそめる人と興味を持つ人がはっきりわかれる分野ですから、仕方ないかもしれません。デスマッチに「危険」「恐怖」の側面があることは否定しません。でも、同時に、運営や他のレスラーたちと一緒に作り上げていく芸術作品でもあります。
観客からみて「死ぬのではないか」と思う急所の1mmずれた場所を、サクッと射抜くような凶器さばきができるレスラーたちへの尊敬もあります。クレイジーな試合をするからすごいのではなく、実は繊細な計算のうえに成り立つ美学があるんですよね。私は、凶器によって流血する美しさもあるし、観客がどよめく技を繰り出す美しさもあると思っています。
――ご自身が言われてもっとも嬉しかった評価はなんですか?
杏ちゃむ 尊敬する先輩レスラーから「令和の工藤めぐみ」と呼んでもらえたことでしょうか。ちょうど同じ時期に、お客さんからもそのように言っていただきました。工藤さんは、美しさだけでなく強さも兼ね備えた女子プロレスラーであり、心から尊敬するレジェンドのひとりなんです。私も、職業人として美学を持ち続けられたらと考えています。
意外な“将来の夢”
――プロレス以外で興味を持っていることはありますか。
杏ちゃむ 父の死をきっかけに、実家が空き家になって考えるようになったんですが、長野県の周辺地域には、高齢者がおひとりで暮らしている家がとても多いので、何とか、コミュニケーションと食事を提供できる施設が作れないかなと。それこそ、「おとな食堂」みたいな。
――ご自身の学生時代に感じた寂しさが根底にあるのでしょうか。
杏ちゃむ もしかすると、そうかもしれません。私は家庭の事情で、特に小学生時代はひとりで夕飯を食べることが多く、それがとても寂しかったんです。その後、いろいろな人たちに助けてもらいながら孤独感を薄れさせることができましたが、人生の終末期に同じような思いをしている人がたくさんいると思うと、いたたまれない気持ちになって。将来は、そうした人たちの拠り所を作れたらいいなと思っています。
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