ドラマ『神様、もう少しだけ』(フジテレビ系、1998年)などで知られる、俳優の金城武(52)。現在、日本のメディアからは遠ざかった彼だが、中華圏での注目度は少し異なる。2025年10月公開の映画『風林火山』(日本未公開)に出演すると、現地の香港メディアではその演技が絶賛。改めて俳優として存在感を示した。

 日本人の父と台湾人の母をもち、アジア映画で活躍する彼が、香港で高い支持を集め続ける理由について、香港在住のライター・ベック知子氏が3つのポイントから解説する。(全2回の2回目)

◆◆◆

ADVERTISEMENT

金城武(2014年、中国・香港合作映画『ザ・クロッシング』記者会見で) ©時事通信社

1. 国際的アイデンティティと語学力

 香港映画『恋する惑星』(1994年)で、日本語を含めた4つの言語を自在に操る姿は、彼の高い言語能力を強烈に印象づけた。

 日本人の父と台湾人の母を持ち、台湾・台北市出身。小中は日本人学校、高校ではアメリカンスクールで過ごした彼は、生まれながら多言語・多文化の環境のなかにいた。彼の母国語をひとつに絞ることは難しく、幼少期の台湾語に始まり、のちに北京語や日本語を身につけていった。

 複数の言語や文化が入り混じった彼独自の感性は、役にも深みと奥行きを与えている。特定の国のイメージに固定されることなく、ボーダーレスで自由に感情を表現できる柔軟さ。それこそ、ウォン・カーウァイ監督をはじめとした多くの映画人を魅了した理由のひとつだろう。

中華圏と日本、どこでも通用する「カネシロ・タケシ」

 中華圏の俳優で英語と中国語を操る人は少なくないが、加えて日本語も堪能で、日本市場での実績も豊富。さらに、彼が特別なのは単なる言語能力にとどまらない。

 多くのスターが英語名と中国名を使い分けるなか(例えば香港のトニー・レオンは、現地では中国名の梁朝偉で通っている)、日本・香港・台湾・中国のどの市場でも「カネシロ・タケシ」というひとつの名前で通用する。

2004年制作の中国映画『LOVERS』(チャン・イーモウ監督)で共演したチャン・ツィイー(中央)、アンディ・ラウ(右)と ©EPA=時事

 台湾出身で日本国籍を持ち、香港映画界でも多くの作品で存在感を示してきた彼は、東アジアのどこに入っても「アウェイの人」になりにくい。

 日本をはじめ、台湾・香港・中国といった中華圏市場のどこでもトップ級として通用する顔と知名度。この希少性こそが、アジアにおける彼の立ち位置を別格にしている。