毎年、8月が近づくとメディアには戦争関連の特集が並ぶ。しかし、戦後81年を迎えた2026年、実体験として戦争を語れる当事者は極めて少なくなった。歴史が教科書の中の「記号」と化し、風化が進むなか、一冊のビジュアル本が静かな、しかし確かな衝撃を与えている。宝島社から刊行された『AIとカラーでよみがえる戦争の昭和史』である。

 本書は、昭和改元から満州国の誕生、日中戦争、日米開戦、そして敗戦と日本軍の消滅にいたる昭和の激動期を、最新のAI技術によってカラー化した写真で振り返る1冊だ。ページをめくると、そこにあるのは「モノクロームの遠い過去」ではない。450点を超えるカラー写真が描き出すのは、現代の私たちと地続きの、青い空や人々の生々しい表情である。

ロケット特攻機・桜花は、一式陸上攻撃機の胴体に吊るされ、空中で切り離された後にロケットを噴射する。機体頭部に約1.2トンの爆薬を装填し、最大時速は約876キロに達する。特攻機のため、着陸用の車輪は付いていない。写真は出撃前の神雷部隊の特攻隊員。

 なぜ、今カラー化が注目されるのか。 それは、白黒写真を通して見る戦前・戦中・戦後の景色が、無意識のうちに私たちに「過去の出来事」という安全な距離感を与えてしまっていたからだ。しかし、AIカラー化で色彩を与えられた写真は私たちに突きつける。あの凄惨な戦争は、今と地続きの世界で、私たちと同じ生身の人間が引き起こし、巻き込まれていった「現在進行形の現実」なのだ、と。

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 戦後81年の8月。原爆の日や終戦の日を迎えるこの時期に本書を読む意義は、まさにこの「当事者性」の獲得にある。社会全体が熱狂に包まれ、破滅へと突き進んでいった空気感を、臨場感あふれるカラー写真を通して追体験する。再び不穏な空気が漂う現代を生きる我々にとって、決して他人事とは言えないないはずだ。

昭和11年(1936)6月に行われた防空演習で、ガス・マスクを着用して、避難訓練を行う女学生たち

 白黒の歴史を、自分たちの問題として捉えなおす。本書は、単なる歴史の記録集ではなく、未来へ向けた静かな警告の書として、今こそ手にとるべき一冊だ。

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 続く記事では本書より、日本が戦争に向かっていき、そして敗戦に至るまでの過程を捉えた印象的な16枚の写真を抜粋して紹介しています。ぜひ、合わせてお読みください。

次の記事に続く 「開戦」と聞きバンザイする男性、ガスマスクで行進する女学生、五・一五事件の青年将校…AIカラー化でよみがえる「戦争に向かう日本」を捉えた“6枚の写真”