とくに保守的なファンにとって、クラウンの伝統的なアイデンティティが失われたことは、かつての「豊かになっていく日本」のシンボルが消えていくことと等しかったのかもしれない。
一方で、従来のクラウンに古臭さを感じていた層や、運転の楽しさを重視する層にとって、この変化は歓迎すべきものだった。動力性能の向上や躍動感あるデザインなど、車としての完成度を評価する声も多かったのだ。
実際、登場後の年間販売台数は11万台規模まで伸び、2004年の登録車販売ランキングではなんと5位に食い込んでいる。その後も先代を上回るペースで売れ続け、思い切った方向転換はしっかり結果につながった。
ちなみに当時の新車価格はおよそ350万円~500万円。今の感覚からすると、高級車にしては手頃にも思えるが、当時はカローラが100万円台前半、アルファードでも260万円~460万円という時代。
やはりクラウンは明確に「ブランドを代表する高級車」であり、それでいて年間5位の販売台数を記録したところに、このモデルの商品力の高さが窺える。
憧れの高級車は「改造車の定番」に
さて、多くの高級車がそうであるように、このクラウンも型落ちになるにつれ、改造のベース車両として使われることが増えていく。生産終了は2008年だが、カスタム系の専門誌でしばしば表紙を飾ったり、特集が組まれたりしはじめるのは2010年代に入ってからだ。
このように、「登場から10年ほど経った高級車が中古車市場に出回り、改造されて街にあふれていく」という流れは、クラウン以外にも見られる現象である。
とくに高級セダンの場合、高級志向のオーナー層は型落ちを嫌い、また中古車を求める層は維持費の高い車を避ける傾向にある。結果として、中古車市場における高級セダンの需要は低迷し、値落ち幅も大きくなりやすいのだ。
加えて、もともと流通台数の多いゼロクラウンは、価格の面でも、中古パーツの流通量としても、購入・維持のハードルが低い車だった。2010年代半ばになると100万円を切る個体も珍しくなくなり、VIP系(高級セダンを改造するジャンル)の定番としての地位を築いていく。

