あったはずの道は消失!

 手前の湯で一息ついたものの、今回の旅の最終目的地はここではない。狙うはここからさらに数百m上流、百名瀑「惣滝」の真下に潜む「直下の湯」だ。しかし、昭和の時代にはあったはずの道が、崩壊して跡形もなく消失している。

 道なき谷を押し通るしかない。先ほど降りた崖を登り返して先へ進む。先人がたどったであろう踏み跡を探して崖をトラバース(横移動)しながら降りるが、草で覆われて足元が見えず滑りやすい。一歩間違えれば遥か下の谷底まで一直線だ。滑落しそうな緊張感ある山の急斜面を横切って進み、掴んだ草が抜けて落ちそうになりながら降りていく。

 大岩を乗り越えて、やっとの思いで水量が多く流れの速い渓流に出る。豪雪地帯の谷底には夏まで雪渓が残っていて、渡渉するにはとても冷たい。

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直下の湯へのアクセスは渡渉を繰り返す

 谷の上方奥に豪快に流れ落ちる惣滝が見えているが、次々に難関が立ちはだかり、なかなかたどり着けない。

百名瀑の惣滝は見えるが道のりは厳しい

  幾つもある川沿いの巨石を渡り歩きながら、滝の向かいの岩壁の直下を目指す。

何度も崖を登り降りする
断崖の壁面は温泉析出物の白い縦縞が模様を描き絵画のようだ(崩落前の2010年代の写真)

 幾多の試練を越え、ついに辿り着いた。これこそが、最奥に位置する「直下の湯」だ。そこには、まるで城壁のように美しく組み上げられた石垣と、なみなみと溜まる白濁した湯があった。

大工の野湯マニアが組み上げたという綺麗な石組

 頭上の壁面からは温泉が湧き出し、温泉成分(析出物)が白い筋となって崖を彩っている。