授業は月に1週間だけで野球に専念する通信制高校に普通の学校は勝てるのか
通信制高校は入学試験がないところが多いので、偏差値という概念がない。かつては不登校生や働きながら学ぶ若者を受け入れてきたが、今は高校生の年齢からスポーツや芸能など「一芸」に打ち込みたい若者を受け入れている。
同じ通信制高校でも、コースによってキャンパスもカリキュラムも全く違っている。
筆者は沖縄の通信制高校の野球部に所属する生徒に話を聞いた。彼は自宅から通っているが、朝、バスに乗って野球部の寮に集合し、寮生と合流して、そこからグラウンドに移動して一日中練習しているという。授業は月に1週間だけ、それでも英検や各種の資格を取っているそうだが、こういう高校が登場すると、これまでの高校は太刀打ちできないのではないかと思う。
通信制高校に通う生徒は、全高校生の10%に迫っている。いろいろ問題はあるだろうが、これからの高校野球をリードするのは通信制高校になるかもしれない。
甲子園と同時期の北海道では、甲子園に行けなかった高校3年生を対象とする「Ligaサマーキャンプ」というイベントが行われている。今年で3年目だが、筆者はここで、元ロッテのサブマリンエース、渡辺俊介さんに話を聞いた。
渡辺さんの息子の向輝さんは東京大学野球部で活躍し、NPBのスカウトも注目したが、最終的に一般企業に就職した。野球と勉強の関係はどうだったのだろう。
「そもそも勉強と野球の両立と言いますが、野球はあくまで部活です。高校生くらいまでは、好きで夢中になってやるのがスポーツ、好きじゃなくてもやらなきゃいけないのが勉強です。
うちの息子は、大学でも楽しんで野球をしていましたが、4年生になって勝ち点をとるとか、プロを目指すとかを意識して、初めて楽しくなくなったみたいです。そこでいろいろ相談されましたが、息子が勉強だけでなく、野球でもそこまで行けたことは、親としても幸せだったと思います」
渡辺さんの話は、説得力があった。
野球と勉強の関係は、本来はトレードオフではない。勉強は生きていくために「必要なもの」。野球などスポーツは楽しく豊かな人生を送るために「大切なもの」。
選手自身も、親や家族も、目の前の甲子園や進学だけを考えるのではなく「その先の人生」を見据えて、総合的に考えるべきではないかと思う。
