「私が帰ったらいなくなっていて」誕生日祝いのケーキを買い行き、初めて失踪
――行政にも相談したんですか。
恋池 途中からデイサービスを利用するようになって、かなり楽になりました。
最初は「先生は偏屈だから嫌がるんじゃないか」とか、「プロの漫画家だった先生に折り紙とか塗り絵をやらせるのはどうなんだろう」って躊躇があったんですけど、意外にも協調性があって大丈夫でした。
――穏やかなタイプの認知症というか。
恋池 そうですね。うまく言えないんですけど、先生は自分の感覚を信じてる感じが強いんですよね。
ほかの男性の利用者さんでわがままを言ったり暴れたりする人がいても、先生がいるとすっと大人しくなるような雰囲気をまとっているらしいです。
――一方で、徘徊することもあったそうですね。
恋池 「今日は私の誕生日なんだ」と先生に言って、そのまま仕事に出たことがあったんですけど、私が帰ったらいなくなっていて。
私のためにお祝いのケーキを買いに行こうとしてくれたみたいなんですけど、帰り道がわからなくなっちゃったみたいで。
ただ、そのときはまだ住所は言えたので、何度もコンビニに入って道を聞いて、その度に買い物をしたレシートの裏にメモを残しながら、一生懸命自力で次の日に帰ってきて。それが徘徊というか、家から出ていってしまった最初ですかね。
「民家に侵入して通報されたり…」
――そのときは自力で帰宅できた。
恋池 最初は自分で帰って来られてたんですけど、そのうち一切帰って来られなくなり。その度に警察に捜索願も出しましたが、それもあんまり意味がなくなっていって。
――「捜索願の意味がない」っていうのはどういうことですか。
恋池 私自身も探しに行くんですけど、それで見つかるわけでもなく。で、そのうちどっかにへたり込んで通報されたり、民家に侵入してやっぱり通報されたりってことが増えてきて、だからもう、待つしかないんだなと。

