眼鏡が割れ、他人の靴を履き…ボロボロの状態で発見されたことも
――なるほど。
恋池 だんだん認知症が進んでくると、スリッパで家を出ちゃったりするので、そうすると目立つから近所ですぐ見つけてもらえるようになったんですけど。あとはGPS端末を持たせて、それで追っかけたりもしましたね。
――見つかって帰ってくると、先生はボロボロの状態になってるのですか。
恋池 そうそう、眼鏡が割れてたりとかね。前に保護されたときは、途中で土砂降りに遭ったみたいで、発見されたときに誰のかわからない靴を履いてたんですよ。
これを警察に言ったら盗難になっちゃうのかなと思って、そのときは言えなかったんですけど。
――サバイバル能力があるといいますか。
恋池 たくましいなと思いました。きっと履いていた靴がぐじょぐじょになって気持ち悪くなって、そのへんに干してあった靴を持ってきちゃったんだろうなと。
あと収集癖があるんで、警察に保護されたときも、なぜか机の上にゴルフクラブとか、花壇に挿してある「アサガオ」ってプレートとかがいっぱい並べられてて。
――大変な状況ではありますが、ちょっとシュールでもありますね。
恋池 警察の人に「これは旦那さんの持ち物ですか」って聞かれたんですけど、そんなわけないんで、ちょっと笑っちゃいましたね。
交わした約束を守るため「先生のせいで不幸になっちゃいけない」
――徘徊もあると、いつも気を張っている感じじゃないですか。
恋池 今はもう徘徊とかはないんですけど、介護で寝不足なので、それがつらいですかね。
――そうですよね。
恋池 でも、先生のせいで不幸になっちゃいけないなと思ってて。先生は最初からずっと、「自分のやりたいことをやれよ」って言ってたんです。で、「そのために俺が邪魔になるんだったら、いつでも捨てなさい」って。
だから、「介護のせいでやりたいことができない」っていうのだけは言っちゃいけないと思ってるし、そうなるぐらいなら先生を捨ててでも、先生と交わした約束を守ろうと思ってるんです。
撮影=佐藤亘/文藝春秋
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