「ピンクのスーツ」で中央に立つ愛娘と、背後でひっそりと「白いジャケット」をまとう妹——。北朝鮮の金正恩総書記は8月14日、「祖国解放81周年」に際して平壌の大城山革命烈士陵を訪問した。参列した幹部全員が厳粛なダークスーツで身を固めるなか、あえて異質な衣装を誇示する2人のロイヤルファミリー。北朝鮮の国営メディアが報じた写真や映像を見ると、権力の中枢で繰り広げられる女の戦いが見えてきた。
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幹部がダークスーツで揃うなか、異彩を放つ2人
大城山革命烈士陵は抗日パルチザン闘争時代からの功績があった政治家や軍人などをまつった国営墓地。14日の訪問には、報道によれば、金正恩夫妻、西側メディアがキム・ジュエと呼ぶ娘ほか、党や軍、外務省、国防省の幹部らが同行した。映像で見る限り、100人ほどが参加したが、軍服を着た軍人以外は、金正恩夫妻を含め、皆がダークスーツを着用していた。厳粛な場所の雰囲気に合わせたドレスコードと言えるだろう。
例外が2人だけいた。1人はピンクのスーツ姿のジュエ氏。いつものようにセンターの位置を占めており、金正恩氏と一緒に整列した軍人を閲兵するなど、後継者として扱われているように見える処遇を受けていた。そしてもう1人が金与正党総務部長だ。報道写真や映像では目立たない位置ながら、純白の上着を着用していた。
北朝鮮では地位が高くなるほど、目立つことを嫌がるようになる。粛清の理由のなかで「不正蓄財」と並んで多いのが、ライバルたちからの「最高指導者への告げ口(讒言)」だからだ。北朝鮮では「最高指導者との距離の近さが権力の大きさを決める」という不文律がある。脱北した元党幹部は「最高指導者が出席する会食があると、いつも事前に配られる席次表を見て、自分の地位に変化がないか確認していた」と語る。誰もが最高指導者の歓心を買いたいと考えている。そうした背景があり、服装や言動で目立った動きをすると、周囲から「最高指導者を軽んじている」「野心がある」などと密告され、権力社会から転落することになるのだ。
不文律を軽んじると“叔父”ですら処刑された
かつて、こうした不文律を気にしなかったのが金正恩氏の叔父、張成沢元国防副委員長だった。同氏は金正日総書記の妹、金敬姫氏の夫で、金正日氏から絶大な信任を得ていた。
過去の南北首脳会談の昼食会でのことだ。大広間にいくつもの円形テーブルが並ぶなか、しばらくすると「将軍様にお酒をお注ぎしなければ」「ご挨拶だけでも」と、誰もが我先にと主賓席へ群がり始めた。だが、張氏だけは悠然と自席から動こうとしない。心配した韓国政府関係者が「行かなくて大丈夫ですか」と声をかけても、「私はいいんです」と答えるのみだった。そんな絶対的な権力者すらも、結局は対立勢力から「権力を奪おうとしている」と告げ口され、2013年12月に処刑されたのである。

