『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)、『浅田家!』(2020)、『兄を持ち運べるサイズに』(2025)などの作品で、中野量太監督はどこかいびつながらも大きな愛に満ちた家族を描き続けてきた。10年ぶりの完全オリジナル脚本で挑んだ新作『私はあなたを知らない、』では、天涯孤独だった男・夕平(坂口健太郎)が“家族”というかたちの幸せを知り、それがゆえ愛する人を殺めてしまうヒューマンサスペンスを描く。物語に込めた思い、そして中野監督自身が考える家族のかたちとは。
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「こうすれば家族」という答えはない
──中野監督はこれまでの作品でも一貫して家族の姿を描き続けてきました。ですが今回は、結果的に家族を持てなかった男が主人公です。ご自身としては、ずっと描き続けてきたテーマとの乖離はなかったのでしょうか?
中野 はい。でも、一瞬は家族になっているんです。夕平はそれを感じてしまったからこそ、手放せなくなってしまう。家族が物語の軸にあるという点では、今まで自分がやってきたことと変わっていないと思います。
──物語のなかで、夕平は「何がどうすれば本当の家族なんですかね」という印象的な言葉を残します。監督のなかで、家族のかたちとは明確に体をなすものでしょうか?
中野 それはわからないんです。わからないということが僕のなかで決まっている。それぞれの家族にそれぞれの家族のかたちがあるけど、「こうすれば家族です」という答えはない。映画では、かりそめの家族を得た夕平が、朝起きてその寝顔を見て涙する。夕平にとってはあれが家族だったんです。でも、他の家族にはまた違うかたちがある。やっぱり答えはないんです。みんな違っていい。僕個人としては、食卓を囲んで一緒にご飯を食べる人が家族だという感覚があります。

