「欅坂を抜けたから笑顔でやってる」と…

 そのMVのなかで、平手は感情を爆発させたように踊ったり走り回ったりしている。平手はミセスが以前から好きで、「WanteD! WanteD!」という曲もリリース時(2017年)に知り、その歌詞がまるで自分の気持ちを歌っているように感じて、支えられていたところがあった。それだけに撮影にあたっては、この曲の世界観が、歌詞のちょっと皮肉めいたところも含めて出るよう、踊りや演技で表現してみたという。

平手が出演したMV、「WanteD! WanteD!」 (Side Story ver.)(Mrs. GREEN APPLEのYouTubeチャンネルより)

 MVが配信されると、そのなかでの解放感に満ちた姿に「欅坂を抜けたから笑顔でやってる」といった見方もされたが、彼女としてみれば、それは楽曲から生まれた笑顔であり、自分の事情とは関係なかった。

「平手友梨奈」ではなく「曲の中の女の子」

 当時のインタビューでは、MVに映っているのは「平手友梨奈」ではなく、あくまで「『WanteD! WanteD!』の曲の中の女の子」と思ってくれたら一番うれしいと語っている。実際、MV中、彼女が喜んでピョーンと飛び上がると、手を広げて走り去っていくシーンに対し、一緒に見ていたマネージャーが「この子、バカなの?」と言ったときは、すごくうれしかったという。

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 彼女としては、この歌の主人公である女の子は《きっと自分のことも先のこともなんにもわかってないバカな子で、大人からなのか、何かからひたすら逃げて逃げて、でも何かを探してるっていう子だと》想定して演じたからだ(『ロッキング・オン・ジャパン』前掲号)。

 ミセスのMVに出演したのもそうだが、彼女は表現をするうえで、《その時、時代に何が必要とされていて、何が欠けていて、何が求められているかっていうのは結構考えるかもしれない》という(同上)。

ソロ転向後はさまざまなスタイリングも披露(平手友梨奈公式Xより)

撮影前は不安でいっぱいになる

 それは、もともと自発的に表現したいものがないからでもあるのだろう。だから、けっして自分本位に考えることはない。《歌もダンスも映画も、観てくださるみなさんにその世界を届けたいという思いで臨んでいます》とは、3本目の出演映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(2021年)公開時の彼女の発言だ(『anan』2021年2月17日号)。

 それだけに、撮影に入るときは「自分の役を本当に届けられるだろうか」とか「自分が携わっている以上、この作品をよりいい映画にできるだろうか」と、いつも不安でいっぱいだという。ここからは彼女の作品に対する責任感がうかがえる。