「母は自室のベッドの上で仰向けに倒れていました」
――お母さんが亡くなった時の状況を教えてください。
おおたわ その日の朝、母にお寿司を買って行き、玄関を開けようとしたら内側からチェーンがかかっていました。彼女の自室の方からテレビショッピングの音がするのでいるのは間違いないのですが、声をかけても中から返事はなくて。
ただそれまでにも、嫌がらせで私のことを玄関から締め出すようなことが何十回とあったので、その日も母の機嫌が悪いのだろうと思ったんです。だから実家に入るのを諦めて、同じ建物にある診療所に直行して仕事を始めました。
でも夜になっても状況が変わらず、部屋の中に灯りがつかないままだったので、さすがに違和感を覚えたんです。やむを得ず、警察とレスキュー隊の方に来ていただいて部屋の中に入ると、母は自室のベッドの上で仰向けに倒れていました。
――その時にはすでに亡くなっていたのでしょうか。
おおたわ すぐに駆け寄って心臓マッサージを行いましたが、すでに息絶えていました。その日の朝までは生きていた形跡があったようですが、私が訪ねた時にはもう亡くなっていただろうということでした。
亡くなっている母の顔を見た時、彼女がすごくほっとしているように見えました。「あ、この人初めて楽になれたんだ」と思ったんです。
「彼女も苦しかったんだろうな」母娘関係での後悔
――お母さんが亡くなってから、何か変化がありましたか。
おおたわ それまで気付かなかったのですが、耳の聞こえ方が変わったんですよね。ずっとノイズのような耳鳴りがしていたのが急に聞こえなくなって、「世の中ってこんなに静かだったんだ」と思いました。
――お母さんとの関係で、何か後悔していることなどありますか。
おおたわ もちろんたくさんありますよ。もっと普通の関係を築けなかったのかとか、もっといい方法はなかったのかとか。自分が大人になればなるほど「彼女も苦しかったんだろうな」とか「もう少し楽に生きたかったけれど、それがうまくできない不器用な人だったんだろうな」という風に、色々なことを思います。
でも、振り返ってみても正解が見つからないんですよね。あれ以外に方法があったのかと言うと、やっぱり分からないんです。

