幼い頃から常に母の機嫌に振り回され、顔色をうかがいながら育ってきたという、おおたわ史絵さん。やがて母は薬物依存症に陥り、「いっそ死んでくれ」と願うほど、母娘関係に苦しんだという。

 おおたわさんの母はなぜ、薬物依存症に陥ってしまったのか。学生時代のおおたわさんはどのような苦悩を抱えていたのか。話を聞いた。(全5回の2回目/3回目に続く)

おおたわ史絵さん ©鈴木七絵/文藝春秋

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「髪を抜く抜毛症で頭頂部が禿げてしまったり…」高校まで続いた自傷行為

――おおたわさんは子どもの頃、お母さんから暴力を受けることもあったそうですが、当時はどのような心境だったのでしょうか。

おおたわ史絵さん(以下、おおたわ) 怖いという表現が合っているかわかりませんが、気付けば母の顔色を窺っているのが日常でした。私にとって、家政婦さんが作ってくれる毎日の夕食の内容よりも、帰宅した時に母の機嫌が良いかどうかの方が重要だったんです。

――それが普通ではないことに気付いていましたか。

おおたわ いや、それが普通なんだと思っていましたね。苦しかったかどうかは覚えていないのですが、小学校の中学年くらいの時には、心身症的な症状が随分出ていたと思います。髪を抜く抜毛症で頭頂部が禿げてしまったり、チックが出たり、爪を噛んだりする自傷行為が高校まで続いたりしました。

私にとって一番怖いのは天涯孤独になること

――生育環境によるトラウマや影響などはありますか。

おおたわ 時間が経って忘れてきてはいますが、しばらくは実家の扉を開けるのが怖くて仕方がなかったです。誰も住んでいない実家をそのままにしていて、たまに掃除に行くのですが、嫌なことがたくさんあったので気が重かったですね。

 生育環境が影響しているのだと思いますが、私にとって一番怖いのは天涯孤独になることなんです。子どもの頃から1人になるのがすごく怖かったので、研修医時代が終わってすぐに結婚しました。30年以上離婚しないでやってきている理由は、やっぱり孤独が怖いからだと思います。

 

――子どもの頃、何か心の支えなどはありましたか。

おおたわ 「ポニー」という名前の犬です。雑種のメス犬なのですが、母が私を叱ったり手をあげたりすると、ポニーが庭から走ってきて「この子を叩くな」というように、母の袖口を噛んで止めてくれるんです。

 悲しい時や家に入れてもらえない時は、外でずっとポニーを抱いて待っていました。私が小さい頃から飼っていたので、ポニーは私のことを妹か娘のように思ってくれていたのかもしれませんね。