母が「オピオイド」という注射薬に依存するようになった経緯

――お母さんは、薬物に依存するようになっていったそうですね。

おおたわ 母は幼少期に盲腸をこじらせてひどい腹膜炎を起こしたことがあり、人工肛門になってしまったんですね。それから10年以上にわたって8回も手術を繰り返し、18歳の時に人工肛門を閉鎖したのですが、手術の影響で腹腔内に癒着が生じ、腹痛発作を起こすことが多くありました。

 私が小学生の時には、母がたびたび「お腹が痛いよう」と寝込んだり、睡眠導入剤や鎮痛剤を大量に飲んだりする癖があったと記憶しています。それでは飽き足らず、私が中学生くらいになると、母は「オピオイド」という注射薬に依存するようになっていきました。

ADVERTISEMENT

 

――「オピオイド」とはどのような薬なのですか。

おおたわ 本来は手術後の痛みや、癌の痛みのために使う鎮痛剤です。ちょうどその頃に販売が開始された注射製剤で、当時は「安全性が高くて使いやすい」という触れ込みで医療機関に出てきたのですが、実は依存性が高いということは知られていなかったのです。

 父は医者でしたから、最初は「お腹が痛い」と寝込んでいる母をなんとか楽にしてあげたいという気持ちでオピオイドを投与したのが始まりだったようです。

手足の皮下脂肪は溶け、皮膚が硬化してケロイド状になっていた

――薬の効果は大きかったのでしょうか。

おおたわ とてもよく効いたようですね。母は父の気を引きたいがために腹痛を訴えることも多かったのですが、オピオイドを与えると母の苦悶の表情がすーっと楽になるので、父も安心して仕事に戻ることができたそうです。今にして思えば、それが悪夢の始まりですね。

 最初は月に1、2回だったのが、気が付いたらどんどん増えて、最終的には1日に3本打ち続けるようになっていったんです。

――薬を使い始めてから、お母さんにはどんな変化がありましたか。

おおたわ 長期的に使用頻度が高くなっていったので、やはり精神状態に影響をもたらしました。聞こえていないことが「聞こえた」と言って怒ったり、私が一言も話していないのに「私のことを悪く言った」と言って怒り出したり、幻覚や幻聴が出る状態になっていたのだと思います。

 注射痕も普通の形ではなく、何百回にもわたる薬液の注入による影響で、手足の皮下脂肪は溶け、皮膚が硬化してケロイド状になっていました。両腕に打てなくなると今度は太もも、右の太ももが潰れたら今度は左、という風に、両手両足は火傷の跡のように硬く変性していましたね。

 

 母もそれを気にして、袖のない服は着ないですし、人とも会いたがらなくなって、だんだん引きこもりになっていきました。

 呼吸機能障害で喘息発作のようになって救急搬送されることも何度もありましたし、脳の細胞が壊れて精神障害のような症状も出ていました。