「好きな人フィルターですっけ? 掃除した方がいいですよ」

 なにかのフィルター掃除をするたびに、その前段にあった「あなたの夫、僕の妻と不倫してましたよ」とセットで頭に浮かぶようになった。『silent』(フジテレビ系、2022年)や『海のはじまり』(フジテレビ系、2024年)など、デビュー以来、多くの注目を集めてきた脚本家・生方美久。その最新作『Tシャツが乾くまで』(TBS系)の劇中に登場するセリフである。

 生方が紡ぐこの言葉に、さらに特別な響きを与えているのが、俳優の中島歩だ。

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中島歩(37) ©dpa/時事通信フォト

2組の夫婦をめぐる話題作『Tシャツが乾くまで』

 近所のコインランドリーで偶然出会った瀬尾咲子(蒼井優)と園田樹生(いつき)(中島歩)は、それぞれの配偶者が乗る高速バスが事故に遭ったとの一報を受け、思わぬ形で再会する。冒頭の皮肉めいた言葉は、妻・あずさ(夏帆)と咲子の夫・充(松山ケンイチ)の不倫関係を以前から疑っていた樹生が発したものだ。

 樹生は妻を亡くしたやるせなさを時折咲子にぶつけるものの、大切なパートナーを失った者同士、友情とも愛情ともつかない、いわば“戦友”のような連帯を見せてゆく。

 かつての充とあずさの関係をなぞるかのように、咲子と樹生の距離が縮まり始めた頃、バスを途中下車していた充が、何食わぬ顔で1年ぶりに帰宅。第6話の終盤では、「どうして一緒だったんですか?」「(充とあずさは)不倫関係だったんですよね?」と樹生が充を問い質す場面が描かれた。

 核心をかわすような返答を繰り返す充の真意を読み解こうと、SNSでは『VIVANT』(TBS系)にも匹敵する勢いで、考察合戦が繰り広げられているのだ。

TBS系で放送中のドラマ『Tシャツが乾くまで』

 とにかく主演の蒼井を筆頭に俳優陣の芝居が素晴らしく、生方脚本の生っぽくも少々文学めいた応酬に、さらなる実在感を与えている。なかでも、本作を唯一無二のものにしているのが、中島の存在ではないだろうか。