原爆投下→終戦は正しいが
米軍と日本軍が熾烈な戦闘を展開した硫黄島の戦いでは、日本軍側は2万人の死者が出てほぼ全滅状態だったが、米軍側にも6800人の死者が出た。沖縄戦でも日本側は民間人を含め18万人以上の死者が出たが、米軍側も1万2000人の犠牲者を出している。
地上戦になれば双方に多数の死者が出ることは事実で、スティムソン元長官の主張も一面では正しいのだろう。しかし、そこには強引なロジックと誇張があったことは明確だ。これらが後年までアメリカ社会で「米兵を救うために原爆が投下された」と広く信じられる世論を形成していくことになる。
当時の流れを検証すれば(1)7月26日のポツダム宣言(無条件降伏要求)を日本は受諾しなかった、(2)このため米軍は8月6日に原爆を広島に投下した、(3)9日にはソ連の対日参戦がわかり、長崎にも2発目の原爆が投下された、(4)これらを受けて日本はポツダム宣言受諾を天皇のご聖断という形で決定し、14日に米英などに通告、15日には天皇が国民に「玉音放送」を通じて降伏を伝えた──となる。時系列的には「原爆投下が戦争を終結させた」のは否定できない事実である。
そして本土決戦が回避されたことで、かなりの米兵の命が救われたのも事実であろう。しかし、それが当初から「100万人の米兵の命を救う」といった具体性を持った目的であったかといえば、そうではないだろう。「原爆」という新型爆弾を使ってしまったことの「正当性」をアメリカ国民に訴えるロジックとして、1年半後に考え出された後講釈(あとこうしゃく)なのである。
「真珠湾攻撃と原爆投下は軍事的意味が全く違う」安倍首相の言葉
ちなみにアメリカ人の大半は「日本による真珠湾への奇襲攻撃で戦争が始まり、原爆投下で戦争が終わった」と理解する。これも時系列的には事実だが、真珠湾攻撃は米艦船など軍事施設への攻撃であり、原爆投下は民間人を含めた無差別爆撃である。
余談だが、オバマ米大統領が2016(平成28)年5月に被爆地・広島を訪問した際、それに先立ち米国務省が「安倍晋三首相がパールハーバーを先に慰霊訪問してくれれば、大統領が広島に行きやすくなる」と打診してきたことがあった。これに対し安倍首相は「真珠湾攻撃と原爆投下は軍事的意味が全く違う」と拒否した事実があることを指摘しておきたい。
ただ、安倍首相のパールハーバー慰霊訪問がオバマ大統領の広島訪問の年の暮、2016年12月27日に行われたこともまた、政治の現実ではある。ヒロシマと真珠湾は政治的にはリンクしていた。



