プロ野球でも似た事例が…

 類似の例はプロ野球の2011~2012年だ。2011年から統一球を採用し、そのボールには従来より低反発の素材が使われた。日本野球機構は、統一球について「従来に比べより低反発の素材」を用いたと説明している。その結果、2011年、2012年のプロ野球は極端な投高打低になった。この時代に起きたのは、単に一部のトップ投手がさらに有利になったということではない。リーグ全体の投手が、底上げされたように見えたことだ。飛ばない環境では、甘い球を投げても長打になりにくい。長打が減れば、大量失点も減る。結果として、超一流投手と平均的な投手の差が、得点結果としては見えにくくなる。

 もちろん、高校野球の低反発バットとプロ野球の統一球は、完全に同じ現象ではない。ボールとバットでは仕組みが違うし、選手の成熟度も違う。ただ、「飛ばない環境が、投手間の差を相対的に圧縮する」という構造はよく似ている。低反発バット時代の高校野球で、織田のような100点の投手の価値が消えるわけではない。しかし、70点台の投手を複数持つチームとの差が、以前ほど一気に開きにくくなった。これが、現代の甲子園の大きな変化である。

©時事通信社

ADVERTISEMENT

 織田のような投手がいても、その投手が常に100点を出せるわけではない。では、織田が80点の日、70点の日にどう勝つのか。そこが現代の優勝校に求められる条件になる。今回の智弁和歌山は、そこを突いた。織田の球威が最高潮ではないと見るや、3回に一気に畳みかけた。さらに投げては和気匠太が8回4安打1失点、最後は久葉亮太へつなぎ、横浜打線を1点に封じた。