夏の甲子園史上初の投手運用を見せた智弁和歌山
智弁和歌山は、「織田を攻略したチーム」であると同時に、「自分たちも複数の勝ち筋を持っていたチーム」だった。
近年の夏の甲子園では、絶対的なエース一人に依存するのではなく、複数の実戦級投手を相手、日程、試合展開に応じて使い分けるチームが頂点に立つ例が目立っている。
2021年 智弁和歌山:決勝で伊藤大稀から中西聖輝への早い継投で勝利
2022年 仙台育英:5人の投手陣を運用し、初戦で甲子園史上初の「5投手完封リレー」を達成
2024年 京都国際:左腕の中崎琉生(4試合31回、防御率1.45)と西村一毅(4試合24回、自責点0)の二枚看板で計55イニングを消化
2025年 沖縄尚学:末吉良丞(6試合34回、防御率1.06)と新垣有絃(4試合22回、防御率0.82)のダブルエース態勢で夏を制覇
そして2026年の智弁和歌山は、和気匠太、長井心海、久葉亮太を軸としながら、米原佑真、三嶋健太、朝来友翔を含む計6投手を起用した。優勝校が一大会で6投手を登板させたのは、夏の甲子園史上初だった。決勝でも長井が先発し、和気、久葉へとつなぐ継投で健大高崎を振り切っている。
準優勝の健大高崎も、佐藤麻恩、北田莉玖、石田翔大、石垣聡志を中心に、計6投手を大会で起用した。準決勝の天理戦では、佐藤から北田、石田、石垣へとつなぐ4投手の完封リレーを完成させており、決勝に進んだ両校がともに厚い投手層を備えていたことは象徴的である。
ここから見えるのは、「100点のエース一人」よりも「70点から80点の投手を4、5人」持つ方が必ず強いという単純な優劣ではない。重要なのは、エース一人に勝敗と負担を集中させず、複数の投手を勝負どころに配置できることである。
仙台育英や2026年の智弁和歌山のような多人数分散型もあれば、京都国際や沖縄尚学のような二枚看板型もある。形は異なっても、相手打線に同じ投手を何度も見せず、疲労や故障のリスクを分散しながら大会を勝ち上がれる点は共通している。