2014年、川崎市の老人ホームで入所者3人が相次いで転落死した事件。

 一審で死刑判決を受けた元職員・今井隼人は即日控訴。東京拘置所で二審判決を待つ男から著者のもとに届いたのは、「自分の言葉で無実を証明したい」という面会の申し入れだった。

 アクリル板越しに対面した今井は、どこか穏やかな表情で「やっていない」と主張。その後、著者宛てに送られてきたのは、便箋200枚にも及ぶ膨大な手記だった。

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 そこに記されていた無罪主張の根拠とは――。ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の文庫新刊『殺め人』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目)

写真はイメージ ©getty

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「無実を証明したい」東京拘置所で対面

「今井が会いたがっているらしい」

 記者仲間の海塚(仮名)からそんな知らせを受けたのは、2021年9月末のことだった。海塚が続ける。

「今井の支援者からコンタクトがあったんだ。なんでも手記を出版したいらしく、その相談に乗ってほしいとかで」

 今井はこの判決を不服として即日控訴し、2019年12月20日から開かれた東京高裁での控訴審で争う最中にいた。

 今井は一審と同様に無罪を主張した。そして、その控訴審も、まもなく結審する見込みだった。

 2021年10月初旬。私は記者仲間の海塚とふたり、東京拘置所の面会室にいた。