「内心は焦っていますよ」

 やり取りを原稿に起こすことを踏まえて面会前から言わなければならないと決めていたことだ。不躾な質問なのに、不思議と腹を立てる様子はない。

「死については考えたことがないです。仮に(犯行を)やっていて、最悪のケース(死刑)になってもいいなら、こうして会ったりしません」

 控訴審の結審は約1か月半後に迫っている。それでも動揺などないように見えるのが気になった。

ADVERTISEMENT

「来年3月9日に予定されている判決で一審同様に死刑判決が言い渡されるかもしれません。焦りはありませんか」

 そう私が質問を重ねるなか、今井は冷静に、理性的に、言った。

「内心は焦っていますよ。逮捕前は、取材攻勢や警察の捜査が自分だけでなく家族にまで及び、自分が(犯行を)認めれば家族が楽になるのではとの思いから、深く考えずに『3人を殺した』と、ウソの自供をしてしまったんですから」

写真はイメージ ©getty

 無表情で抑揚なく繰り返された言葉に、真実性よりも気味の悪さを感じた。

「二審で無実を証明します。事実、私はやってないですからね」

 その後、「本当にやっていないのか?」と私に問いただされた今井の反応である。

 私はこう思う。今井は内心、かなり焦っている。でも、それをぐっとこらえ、あえて穏やかに言っている。二審判決までカウントダウンの日々。一審判決前は自白をしたが目撃証言がなければ無罪を勝ち取れるはずだと楽観視していた。

 しかし見込みとちがい、一審で下された現実は有罪判決だった。もっと自分の障害や取調官による圧迫で自白に至ったことが周知されればわかってもらえるに違いない。そこで、かつて警察がしたように、今井もマスコミを利用し、世間を巻き込みながら風向きを変えようとしている。

 今井は雑談にも応じた。

――体調は?

「いたって普通です。新型コロナにもなっていません」