「先生、私はステージいくつなんでしょうか?」
「ステージでいえば4です。4段階あるうちの4ということになります」
「ステージ4なんですか!」
耳を疑いました。最悪です。先生はなぜ黙っていたのか? 私がショックを受けないように黙っていてくださったのかもしれません。ただ、普通の部分がんや内臓がんと悪性リンパ腫ではステージの数え方が違うということも先生は説明に付け加えました。
「ステージ4」は秘密にして
悪性リンパ腫のステージは次のようになっています。
ステージ1は、がんの病変が認められるのが一箇所のみ
ステージ2は、横隔膜を境に上下の一方にのみがんの病変がある
ステージ3は、横隔膜を境に上下両方にがんの病変がある
そして問題のステージ4は、横隔膜を境に上下両方にがんの病変があることに加えてリンパ外臓器にも広範に病変が認められる
さらに私の場合は、がん細胞が脊髄の中枢神経に入り込み脳に転移する可能性があるということでそれに対する予防あるいは治療といったものも行われる、という解説でした。
これだけの話を一気に聞いて「やっぱり俺死ぬの?」と思わずにはいられませんでした。死を覚悟したのは、「全身にがんが散らばっています」と先生に聞いて以来2度目となります。
先生の告知は、本当に正直にたんたんと事実をそのまま伝えるスタイル。
「悪性リンパ腫は、ステージ4が末期で手遅れという考え方はしません。むしろ、抗がん剤が効くか、効かないか、という点がより重要です」
自信を持ってそう話してくださいました。
さらに私の病気は珍しいタイプなので、いろいろと世界の論文を読んでくださったようでした。
「笠井さんのリンパ腫からは特殊な遺伝子異常が検出されているため、一般的な治療では若干、治療効果が劣る可能性があります。そのため、一段階強い治療を選択しようと思います。持続的に点滴を行うので、治療期間の大部分を入院で過ごすことが必要となります」
とお話しくださいました。
先生の説明は自信に満ちていました。先が見通せているという印象を受けました。先生にお任せしておけば間違いはないだろうと、何か安心をしたのもこの日でした。
「ステージ4」、いわば3回目の告知です。覚悟も決まって面談室を出た私は、妻と長男に頼みました。
「今日説明のあったステージ4という話は、3人だけの秘密にしよう」と。
テレビというのは印象のメディアです。見ている人の多くは、第一印象でニュースを捉えることが少なくありません。「笠井アナ、ステージ4」この一つのキーワードだけでほとんどすべての印象が決まってしまい、「笠井アナウンサーは復帰が難しいのではないか」「場合によってはこのまま命を落としてしまうのではないか」と、どんどん負のイメージが膨らんでいきます。
私は何としても絶対に復帰すると心に決めて入院生活を始めていますので、そんな風にイメージを持たれるのは心外です。さらには妻と長男以外の親族にも心配はかけたくありませんでした。
妻も長男も賛成してくれました。そしてこの「ステージ4」は私が「完全寛解」という診断を受けるまで表に出ることはありませんでした。