地中に埋められ、蓋をされたかつての川を「暗渠(あんきょ)」と呼ぶ。渋谷駅の地下深くに今も「川」が流れているのをご存知だろうか。
かつて葛飾北斎が浮世絵に描いた「渋谷川」は、1960〜70年代に暗渠となった今も地下を流れ続けている。世界一有名な交差点の足元に眠る川の記憶を、書籍『47都道府県・暗渠百科』(丸善出版)より紹介する。(全4本の3本目)
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渋谷川(渋谷区)─渋谷・原宿・新宿を流れる暗渠─
渋谷駅といえば新宿駅と並んで日本の1、2を争う乗降客数を誇る駅であり、駅前の渋谷スクランブル交差点は日本人だけでなく世界から多くの外国人観光客が押し寄せる観光名所となっている。ここで述べる渋谷川もその渋谷を流れる暗渠であり、テレビやWebなどのメディアでもたびたび取り上げられるようになってきたので暗渠的には知名度も上がっているかと思う。
首都高速道路の交通情報ではよく「浜崎橋」や「一ノ橋」といった地点名が挙げられるが、それらの橋は浜松町あたりで東京湾に注ぐ古川という開渠の川にかかっている。古川の上流をたどれば麻布十番、広尾、恵比寿から渋谷まで行き着くが広尾近辺の古川橋より上流からは渋谷川と名が変わる。その渋谷川の上流部分が暗渠になっているというわけだ。
古川および渋谷川の開渠部分は3面コンクリート張りの典型的な都市河川で、立ち並ぶビルの隙間や裏側をひっそりと抜けていくが、渋谷駅に近づくにつれ、近年の再開発によってつくられた川沿いの遊歩道・渋谷リバーストリート、傍らに建つ渋谷ストリームなどによって賑わいをみせるようになる。
いよいよここから暗渠となって地下に潜っていくが、渋谷駅東口地下広場・地下2階のカフェ付近では、その渋谷川が流れるボックスカルバート(四角い箱形の管渠)を下から眺めるという特別な体験もできる。
商業ビルMIYASHITA PARKの横の通りは今でこそ飲食店の連なる喧噪の絶えない道であるが、2020(令和2)年の開業前は自転車やバイクがずらりと並んだ暗渠上の細長い駐輪場にすぎなかった所だ。渋谷川上流はそこから明治通りを斜めに横切って北上し、いわゆるキャットストリートの下につながっていく。その入口の植え込みには宮下橋の親柱が1本だけ残っている。キャットストリートは今やハイブランドから個性的なセレクトショップ、古着店にカフェまで並ぶお洒落トレンド発信地であるが、実は川の痕跡に溢れた暗渠的観光集積地でもある。
