「そら代えるやろ」岡田が徹底した「チーム主義」

 “完全試合リレー”で頂点へ導いたとはいえ、試合後、山井を降板させた落合の判断は大きな議論を呼び、賛否両論が入り乱れた。

 落合に理解を示す「賛」側は言った。

「僅差で、しかも日本一がかかる試合。勝負に徹して万全を期すのは監督として当然の判断」

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 一方、「否」を主張する者も多かった。

「野球は興行、エンターテイメント。奇跡のような大記録、一生のうちに二度と見ることができない一瞬をファンに見せるのもプロとしての務め」

落合博満 ©文藝春秋

 どちらの視点も正しい。答えの出ない議論は当時から平行線を辿った。ただ結果として、中日が日本一を掴んだことは事実として残っている。

 当時、阪神第1次政権にあった岡田は、迷わずに落合の判断を支持している。

「そら代えるやろ。勝ったら終わりやし。ウチなら、そら最後は球児に投げさせる」

 はっきりと言い切った岡田の根底には、「個人よりもチームの勝利を優先」することが大前提としてある。監督になって以降、シーズン中は個人的な感情を捨てることをずっと公言していた。だからこそ村上を完全試合のまま降板させたことは岡田からしてみればごく当たり前の判断とも言えるし、理解はできる。

 とはいえ、まだシーズン序盤の一試合と日本一がかかった試合では状況は大きく違う。その点がどうしても引っかかった。

(監督が村上を降板させた狙いは、チームの勝利のためだけだったのか……)

 そんなことをぼんやりと考えながら、テレビのボリュームを下げた。

 試合は、岡田が8回裏から2番手で送り込んだ石井大智が、巨人の4番・岡本和真に同点ソロホームランを浴びて、完全試合リレーどころか村上のプロ初勝利まで消えてしまう。中日の試合とは真逆の結果になってしまった。それでも延長10回表に勝ち越した阪神が、辛くも勝利を手にしたのだが、試合後、岡田の判断に対して様々な意見が飛び交うことになる。

次の記事に続く 「交代!? マジ!? マジか……!」阪神エース・村上“幻の完全試合”ベンチ裏で起きていたこと「やっぱり投げたかったです」

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