2023年、noteに投稿したエッセイ「パパと私」が大きな話題を呼び、鮮烈なデビューを果たした文筆家・伊藤亜和さんの最新刊『魔女になりたい』が8月27日に刊行されました。
伊藤さんの考える「理想の死に方」や辛い記憶との向き合い方、そして今回の作品で「魔女」というモチーフを出発点にした理由など、今の思いを聞きました。(全2回の1回目/2回目を読む)
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現実世界では魔女になり得ないから
――今回の『魔女になりたい』はエッセイ集としては5冊目の作品ですが、これまでの作品と比べて何か違いはありますか?
伊藤亜和さん(以下、伊藤) 1作目のエッセイ(『存在の耐えられない愛おしさ』)に一番近いのかなと思っています。「戻ってきた」っていう感覚があるんですよね。
ある程度書いてきて、自分がそこまで積み上げてきたものを一回無しにして、もう一回“冒険の話”に戻ってきたという感覚です。でも今回は、1作目のときほど闇雲ではないし、それなりにコンセプトを決めた上で書けたのではないかと思っています。
――「今までは訳が分からないままにいっぱい書いてきた」といったことを以前おっしゃっていましたが、今回はしっかりとコンセプトを決めるところからスタートされたんですよね。
伊藤 そうですね。かつてはパッと浮かんだ、みんなに話せるような楽しい話をできるだけたくさん詰め込むようにして書いていたところがありました。でも、そういうものをある程度出し尽くした部分もありますし、これまでよりも社会的に認知されるようになって責任もあるから、「ちょっと一回ちゃんと考えよう」と。
今回はまず「魔女」というアイディアがあって、そこに肉付けするエピソードを自分の記憶から集めてくる、という作り方をしています。
――「魔女」というのは、昔から温めていたアイディアだったのでしょうか?
伊藤 昔からありましたね。現実では魔女になり得ないというコンプレックスが、自分の中にずっとあったので。だからこそ、現実世界ではなれなかったとしても、自分の生み出したものがそういう“魔女的”な雰囲気を帯びてほしいという願いがありました。
――本作では、エッセイに加えて童話のようなストーリーも織り交ぜられています。書き始める段階で、こういった構成にしたいという構想があったのでしょうか。
伊藤 書きながら考えていくというのがいつものスタイルなので、最初から完璧に構想があったわけではないんですけど、結果的にはなぜか帳尻が合う(笑)。そこは自分の自動運転のような脳の領域に頼っているのかもしれません。


